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菌糸マットの選択と管理 |
〜はじめに〜 |
T、菌糸マットの選択指針と基本的な使用方法 |
| U、具体的な使用方法 1.種及び成長によるビン・サイズの選択 既に、前項のビン・サイズで論じているので、基本的な問題は省略して、本題を論じることにするが、一部の使用法については難しい観察が必要なものもあるので、この項の多くを理解しなければならないかも知れない。 ◎200cc 大きなビンは必要としない。むしろ、初齢は★になる場合もあり、このサイズで充分だと思う。それでも、2〜3ヶ月(3齢前期8g程度まで)は維持できる。 ◎500〜600cc 1〜3g程度で割り出した幼虫はこのサイズが良い。マヨビンと広口ビンがあるが、私は2齢初期幼虫用にはマヨビン500ccを、2齢中期以上には広口ビン600ccを用いることにしている。どちらの場合でも2〜3ヶ月は使用に耐えるが、500ccは3齢前期(10g程度)まで、600ccは15g程度までとする。 また、私は♀幼虫であれば600ccを羽化ビンとしても使用するが、このページの以下に記載した”捨てビン”と羽化する時期の見極めができるまでは、900cc程度のビンを使用したほうが安全である。 ◎900〜1000cc広口ビン 種類や成長予測によっても違うが、15〜24gまでの主として♂幼虫に使用する。使用期間は1〜3ヶ月程度。クルビデンス系など80ミリ以下の♂の羽化用としても使用する。 ◎1500cc広口ビン 30g以上の♂幼虫となるものは口径の広いこのサイズのビンが良い。このサイズの幼虫になると大きな成虫が期待できるので、口径のないビンだと大顎が伸びきらない可能性がある。 グランディス、シェンクリングなど大型のオオクワ♂幼虫は本ビンで育成・羽化をさせている。 尚、アンタエウスと外国産オオヒラタの♂用羽化ビンとしても使用しているが、育成用には2000ccビンがよい。特に外国産オオヒラタの3齢♂幼虫はたいへん大食いなので、このビンで育成させると早いものでは1月もしないうちに食い尽くしてしまうことがあり、結果としてコストUPになってしまうからだ。 ◎2000cc広口ビン 大型3齢♂幼虫育成用。既に述べた通り、アンタエウスと外国産オオヒラタ♂幼虫の育成用に使用している。これらの種には育成用として本ビンを使用したほうが効率が良い。 2.−修正-菌糸マットの詰め方 ここでは、菌糸ブロックをビンに詰める場合の注意事項と具体的な詰め方について、論じることにする。 既にTで述べた通り、基本的に堅く詰めすぎるのならソフトに詰め込んだほうが安全なことはご理解頂けると思う。また、水分量が多いか少ないかも重要な問題であるが、どのくらいの水分量が適切か?を文章で表現することは難しい。感覚的に表現するなら、ブロックをスプーンで崩した時に、ベトッとするようならかなり水分量が多過ぎる。サラッとしていることが重要だ。この2点の原則を念頭に置いた上で、次ぎの具体的な詰め方を参照願いたい。 @どの程度の強さで詰めればいいか? 詰める圧力については、その程度を文章で現すことはなかなか難しい。しかし、はっきり申し上げて、堅詰めするなら緩詰めしたほうがまだいいと思うくらいでちょうどいい。 私には娘が3人いるが、一番下の小5が大型のスプーン(カレー用)で”継続して”最も強く詰められる水準が最もいい。中2の娘が同じ詰め方をしたものは強過ぎる。 余談であるが、子どもに学習させる基本は、なるべく早く終りにさせることを奨励し、間違っても、「もう終わったの?」と言ってはならず、「早く終わらせて、いっしょに遊ぼう」または「ずいぶん早くできるようになったね」などと誉めて、ひとつのことを人より早く終わらせる”喜び”を与えてやることが、結果的に子どもの集中力向上に役立つのである。 話しが横道にそれたが、小さな子は最初は元気がいいが、すぐに集中力が鈍るってくる。詰めはじめた当初はきつく詰めるが、詰めていくと段々緩くなってくる。つまり、ビンの底面はきつく、上面は緩い状態だ。この状態がいいのだ。ひとつ目のビンに対してはそのような詰め方をしている。2つ目、3つ目となってもその詰め方に変わりはないようだ。 また、子どもがビン詰め作業をする時間は、30分〜1時間が精一杯だ。ここでいう”子どもが継続できる時間”とは、この時間であり、ブロック数で2個が限界といったところである。 ところで、私が使用しているコバヤシ製アドバンスのブロックは1個当たり3.6リットルと表示されているが、もう少し多いかも知れない。 この量は、ビンの口きりまで詰め込む必要がないことを考慮しても、1リットルビンなら4本程度という計算になるが、私は最低でも5本とる。通常はこの程度の詰め方で良いと思っている。 尚、具体的な詰め込み方法は、菌糸ブロックをプラ・ケース(大)など容器に入れて、粉々に粉砕してからビン詰めするのだが、詳細はAを参照願いたい。 A菌糸プロックを攪拌する重要性。 ここで申し上げたいことは、ブロックの上面となった部分と下面になったものは同じ水分量ではないことである。また、上下以外でも水分量の違いがある場合もある。 こんな細かいことまで?と、思うかも知れないが、実際にスフーンなどで削ってみれば、すぐにご理解頂けると思う。意外なほど水分量に差があることに驚くことだろう。 そこで、そのまま1個を崩してから、プラ・ケース(大)などの容器に入れ、砕いてよく攪拌し、水分量のむらをなくしてからビンに詰めればいいのだ。 それぞれのビンによって成長のバラつきや羽化不全が発生する方は、実行してみるといい。たったそれだけの作業で、それらの不都合が大幅に改善できるはずだ。 そんな作業は、面倒で時間がかかるなどと、思う人がいるかもしれないが、実際にやってみると、直接ビニールの中の菌糸マットを削り取りながらビンに詰め込むよりは、はるかに楽で時間も早い。しかも、廻りにこぼすことも少なく、きれいに作業できる。 段取りの最初の作業であるプラ・ケースは水道水できれいに洗うだけで良い。このケースをやはり水道水でよく洗って絞ったタオルを使い水分を拭き取るだけだ。これらの作業を全て行っても20分でできることだからやらない手はない。 ところで、一般的に菌糸ブロック(ビンも含め)は、弱齢幼虫用に設定されているものが多いと思われる。上述の方法で攪拌・詰め込みした菌糸ビンはどれも同じものができるので、少なくても弱齢幼虫育成には問題がないはずだ。 尚、私が使用しているアドバンスでは、この詰め方をしたビンで初齢から羽化まで使用しても、問題は発生していない。だだし、羽化ビンでは以下に示す水分を少なくする最低限の努力はしている。 B〜注意〜菌糸ブロックの水分量の違いを活用する 上述のAで述べた上面部分と下面部分の水分量の違いに着眼して、幼虫の成長段階に応じた必要水分量の菌糸ビンにすることが可能だ。Tで述べた通り、菌糸マットの水分量では、「弱齢幼虫には多く、高齢幼虫では少なく、羽化時に使用するものが最も少なくする」の基本に応用するのである。 具体的には、下部分と上部分を2つに分けて、それぞれをよく攪拌してから詰込み、下段部分を詰め込んだビンは弱齢幼虫用に、そして上段部分を高齢幼虫又は羽化用に使用すればよく、それぞれビンのサイズを換えておけば間違った選択・使用をする心配も未然に防げる。 その時、菌糸マットの一部を手でほぐしながら水分の状態を確認し、その感覚を覚えておくことは後々のノウハウにつながるが、手に触った菌糸マットは捨て、間違ってもビンに詰め込む菌糸マットに戻してはならず。一部分といえども菌糸ビンに投入してはならない。 人の皮膚にはをカビなどの悪玉細菌類から身を守るための善玉細菌が付着しているので、手に触れた菌糸マットをビンに投入すると茸菌の繁殖に重大な障害を与えてしまうことは明白である。このことには充分ご注意頂きたい。 善意的にみて、通常販売されている菌糸マット(ブロック)はどれも一応の水準にあると思ってもいいと思うが、こういった通常起こるべき現象を「使用書や注意書き」しているメーカーはないのが実情であり、そこが又「マニュアルのない製品」という所以であろう。もし、こういったことを記載しているメーカーの製品なら信頼できると思っていいかも知れない。 実際に使用されていて、ビンによる成長のバラつきや羽化不全が発生する方は、ぜひ実行してみるといい、確実に改善できるはずだし、細かな設定ができる「菌糸ブロック」を使用する目的と意義がお分かりいただけると思う。 C菌糸プロックの水分除去 Bの分割使用は、使用する幼虫の齢数がバランスよくいる場合には極めて有効だが、初齢幼虫だけとか終齢だけとかという場合には向かないこともあり得る。 既に述べた通り、一般的な菌糸ブロック(ビンも含め)は、弱齢幼虫用に設定されているものが多いので、終齢幼虫、特に羽化ビンとするには、都合がよくない場合もある。 このまま使用したとしても、必ずしも不都合がおこるとはいいきれないが、基本的に3齢幼虫に水分量の多い菌糸マットを使用すると成虫となったときの”縮み”が多くなる。これは、幼虫が”前蛹(ゼンヨウ)”になる時に体内にある水分を大量に排出するために起こる現象である。 また、菌糸マット自体の水分量が多く、ビンの底面に”蛹室(ヨウシツ)”を作られてしまった場合は、この排出された水分によって、蛹室がびしょびしょになることもある。 こうなったら、ほぼ羽化不全か★となると思っていい。この件については再度別項目で対策を示したいと思うが、まずは事前に水分量を少なくしておけば安全である。 水分量を少なくする方法は、T−4の方法が最も簡単であり、それだけでもかなりの効果が期待できるが、水分量が多過ぎて、初齢幼虫に使用するにも不安なものは、もっと確実に水分を除去しなくてはならない。 ここでも、Bに記載した通り菌糸ブロックを粉砕攪拌をしてからの作業となる。その菌糸マットを風の通る日陰におき、攪拌しながら適当な水分量になるまで乾燥させれば良い。天日干しは極力避けたいが、絶対ダメとは言い切れない。ただし、その場合は新聞紙に薄く広げるなどして、できる限り短時間で作業を完了させたほうが、菌糸のダメージが少なくて済む。しかし、そこまでしなければならないほど水分量の多いものは商品としての価値に疑問がある。多分、そのような商品は売れなくなってしまうだろう。 D薬品による除菌の危険性 カビや雑菌の増殖を防ぐために使用するビンなどをエタノールで除菌することを奨励している菌糸マットメーカーもある。 確かに、ヒラタケ、シハイダケ菌は菌自体が弱く、雑菌やカビ菌に弱い性質がある。しかし、産卵木ページで説明した通り、”一定の菌がある領域を占有すると他の菌を排除する”の理論から、エタノールで除菌するほどの必要性はないと思っているし、実際に私はそれらの薬品を一切使用していない。 菌糸メーカーが菌糸を打つ前の生マットに除菌を施すことは理解できる。しかし、通常の状態で使用する限り、菌糸を廻し製品となったものにそんな除菌をする必要はない。 もし、エタノールが菌糸マットについてしまったら、逆に「無菌状態になった有機物ほど無防備なものはない」の理論通り、状況によっては嫌気性のカビが蔓延する可能性もある。通常の環境で詰め込み作業を行う限り、菌糸マットに触れるものを水道水で洗い、水分を切っただけで充分である。 但し、陰湿な環境での詰め込み作業を行うことは絶対ダメだ。雨天や湿度の多い日には作業しないようにしよう。 それでも、菌糸を詰め込む環境などから消毒しなければならないのなら、薬品を使用せず、熱湯や日光による消毒をお勧める.....通常の環境で作業する限り、必要のないことではあるが。 それにしても、世の中は広い。菌糸メーカーの中には菌糸ビンに投入する幼虫そのものを水で薄めたエタノールで消毒することを勧めているものもあるらしい。 いったい何を考えているのだろうか?既に産卵木ページなどで記述した通り、クワガタ幼虫は体内や体表に乳酸菌?などの酸性有効バクテリアを持っていて、そのバクテリアでカビ菌や茸菌などを駆除している可能性が高い。幼虫自体を除菌したら、その有効バクテリアを死滅させてしまうことになる。抗菌肌着的な”何でも除菌”感覚は生理的に悪影響があっても良いことはない。 E幼虫を菌糸ビンへ投入する時期 幼虫を菌糸ビンに投入する時期については、なるべく弱齢を投入した方が大きくなると言っているメーカーやHPが多い。中には”卵”を投入することを奨励しているものまである。 彼らは本当にクワガタを飼育してるのだろうか?また、実際にそんな無茶なことをしているのだろうか?多分、経験していないことを語っているとしか思えない。 クワガタの♀親が産卵木やマットに産卵したところをよく見て欲しい。彼らは産卵木に卵を産むところの廻りを齧ってさらにそこを埋め戻し卵が入る小さな穴をあけ産卵し、再度埋め戻ししているようなのだ。卵が入っている穴を観察してみると正に小さな蛹室のような状態であることがわかる。 私は産卵木ページで記載した通り、多分♀親が齧った朽木に彼らの有害バクテリア防御や消化酵素の秘密があると思っている。 つまり、卵の入っている穴は有害バクテリアなどから防御するための部屋であり、その廻りにある♀親の齧ったマットは孵化した幼虫の”ミルク”であるという考え方である。 幼虫は餌となる朽木に大量に含まれるセルロースの分解(消化)をするためにある種の酵素かバクテリアを体内に持つ必要がある。また、カビなど有害バクテリアから身を守るための善玉バクテリアを体内や体表に付着させているはずだ。 これらの生きるための能力をいつ身につけるのだろう。私はこの疑問を解決するために次ぎの実験を行った。実験で使用したクワガタはシェンクリング、発酵マットは堀江EM菌添加微粉末マットを主体にした自家製である。 a:卵だけを取りだし、末発酵マットに投入保存した。 b:卵と成虫の齧りマットを取りだし、に穴を空け、卵を齧りマットに包むようにして上と同じ発酵マットに入れた。 c:卵を産まれた状態のまま産卵木から周辺ごと切り取り、上と同じ発酵マットに投入保存した。 実験ではa:は5個全て★、b:は4個のうち1個のみ成長、c:は4個のうち3個が成長。という当初に予想した通りの結果となった。 この実験結果は上記で述べた「能力をつける時期」を明白にするものではないが、推測は可能だと思っている。少なくても、卵を産卵木から取出すことの無意味と危険性はご理解いただけるだろう。 それでは、菌糸ビンに投入する幼虫は弱齢ほど成果(大きい成虫となる)があるのだろうか? 大きい成虫がとれるかどうかについては、現在のところ明確なデータを持っていない。しかし、孵化したばかりの幼虫を菌糸ビンに投入すれば、★になる確率が極めて高くなることだけはわかっている。5匹のうち1匹程度の生存率しかない。こんなことをするときは、産卵木の割り出しが早過ぎるなどのミスを犯したときだけで充分だ。また、初齢初期で投入したものは2齢初期又は中期で投入したものに比べ格段に死亡率が増加することも間違いない。 わざわざ死亡率を上げる危険を犯してまで、菌糸ビンへの投入時期を早める必要はないというのが、私の考えである。★にならないことが最も大事であり、★になってしまえばサイズを論じることができないのだから−−。 そのためには、産卵木ページで投入する幼虫の時期について記載した通り、初齢後期から2齢中期の幼虫を菌糸ビンに投入することをお勧めしたい。 我が温室では、この投入時期で育成したものでも、国産オオクワ72〜74mm成虫をはじめ、シェンク76〜85mm成虫などがとれている。 このページをご覧になられた方は、一部のメーカーや何もわかっていないHPに迷わされることなく、★にならない飼育・育成を心がけ、その中から”大きな成虫”をピックアップしてもらいたいと願うものである。 菌糸マットは、まだ発展途上とはいえ、工業生産された”製品”である。工業製品であるからには朽木材や自家製発酵マットに比べ、使いやすく優秀でなくてはならない。また、品質が均一化していて、何時でも入手できるものでなくては、その価値はないに等しい。 菌糸マットを使用する目的は、他の幼虫飼育材に比べて、簡単に安定した幼虫育成が可能になることに尽きる。この要件を満たさないものは”商品”とは言えない。 F羽化不全防止策−T〜「捨てビン」の活用〜 羽化不全!なんと、嫌な言葉だろう。6〜10ヶ月もかけて育成した努力と資金を投入した結果が全て”無”に帰するのである。 この件については、既に上記で一部を記載しているが、次ぎの状態が顕著なときほど羽化不全の程度もひどくなり、最悪の場合は蛹のまま★となってしまう。 a:菌糸が痛んで劣化したとき b:幼虫が菌糸マットを食った量が多く黒くなった部分が大半になっているいとき c:ビンの底面に蛹室を作ったとき(a又はbの悪条件が重ならない限り問題はない) a、菌糸が劣化し易い環境とは−−@菌床マットの詰め方が緩い、A水分量が多い。B温度が高いなどである。 この件については既に何回も記載しているので充分理解できるであろうが、対策は菌糸の詰め込み時に水分量を減らすなど堅く詰められる条件を揃える又は条件の揃った菌糸マットを使用することである。 菌糸は緩く詰めた方が安全であるが、劣化もしやすくなる。劣化すると”水分”も放出するので、少なくても羽化ビンとして使用するものは堅詰めした方が良い。また、夏季にはクーラー使用などの対策が必要である。 bについては、羽化する前に新しい菌糸ビンに投入すればいい。羽化用にひとつの菌糸ビンを”捨てる”つもりで使用するのだ。だから命名は”捨てビン”。 問題は羽化が近くなった終齢幼虫の見極めだが、比較的簡単に判別できる。体表が黄色くなったものをピックアップすれば良い。また、こうなった終齢幼虫は菌糸ビンの入替えが刺激になるのか、投入後すぐに蛹室を作りはじめる。 この方法で羽化したものは全く羽化不全にならない。私は、この方法を実践した3年前から今までに、見極めするのを忘れてしまった1匹を除いて全く羽化不全を経験していない。その意味においても、中がよく見えるガラスビンを使用する意義は大きい。 尚、もし入替え時期が遅くなり、前蛹又はその直前の幼虫を入替えてしまったらほぼ★になるので、見極めには充分注意してもらいたい。また、入替えが早過ぎた場合は、菌糸ビン代のことは忘れ、迷わずに再度の捨てビンを実行しよう。すぐに、入替え時期の見極めができるようになるはずだ。 G羽化不全防止策−U〜応急処置〜 捨てビンが間に合わなかったり、水分量が多いなどの理由で、蛹室(ヨウシツ)が水浸しになってしまったりしたら、ほぼ★か羽化不全になることは免れない。 この場合、”人口蛹室”を使用する方が多いであろう。実際に、奈良オオクワセンターなどではこの手の製品を販売していることからみても、かなりの”消費”があることが憶測できる。 私自身は人口蛹室を使用したことがないので、それ自体を論じることはできないが、クワガタの蛹を蛹室から取り出して、なにもしないで空気中に保存しておけば100%★になるので、人口蛹室を含めた何らかの対策を講じるしかない。 しかし、蛹を蛹室から取り出すこと自体が危険であるようだ。そこで、もっと簡単な方法を伝授する。 一般的に、蛹室から蛹を取出ししなければならないほどの状況となった時とは、既に説明した通り、色々な状況があるが、結果として菌糸ビンの底面に蛹室が作られ蛹室が水浸しになった時であろう。 こういった状況のものには、菌糸ビンを逆さにして蛹室に溜まった水分を排出する方法がある。具体的には、そのようになったビンを逆さにしたままの状態で、前蛹から羽化・取出しまで(通常羽化後1月間)待つだけである。この方法は最も簡単でカネもかからないので、応急処置としてはかなり有効な方法だと思う。 しかし、高温などによって菌糸自体が”死んで終わった”極端な状態ではアンモニアやアルコールなどが発生することも考えられ、この逆さ保存では対応できない可能性もなくもない。やはり、的確な”捨てビン”や室温管理が必要だ。 尚、樹脂系不透明ビン(ポリ・ビン)を使用している方では、菌糸ビン内の状況がわからずに誤って蛹を掘り出ししてしまう可能性もある。この意味においてもビンの中が明確に把握しやすいガラスビンを使用する意義がご理解いただけるだろう。 3.菌糸マットは途中変更できるか? 菌糸メーカーの多くは、その菌糸マットに投入した幼虫を他社の菌糸マットに入れ替えることを実質的に禁止している。その理由として、添加剤の相違、菌床マットの材質相違、茸菌の相違などを挙げている。 しかし、結論から申し上げて私自身は「交換可能派」の一人である。一部メーカーの菌糸については、入替え実験も経験している。 本題に入る前に、私が”産卵木ページ”で論じた「カワラ茸の臭いと自己の好む朽木は同じものであることを知っている」の理論が正しければ、重要なものは”菌床マットの材質”ということになる。 そこで、菌床マットの材質を考えてみると、ほとんどのメーカーは”クヌギ、ナラ、エノキ、ブナ”のどれかひとつか又はそれらの混合である。 例えば、クヌギ100%の菌床マットからナラ100%への変更については、問題がないとは言い切れないが、ヌギ、ナラ、エノキの3種混合の菌床マットからそのうちのどれかひとつの菌床マットへの変更については問題がないと思っている。 つまり、交換前と交換後のどれかひとつの材質が一致していれば、幼虫の立場では”食した経験”があり問題はないと思うのである。 問題は、添加剤と茸菌糸の相違である。前者についてはその添加物のほとんどがビタミン類や”フスマ=小麦粉”であろうと思う。後者についてはほとんどが”ヒラタケ又はオオヒラタケ”であり、茸菌の名称は違うが実質的に同じものである。 以上のとおり、基本的に同じメーカーの同じ菌糸マットで育成することが安全であることは間違いないであろう。 しかし、幼虫が潜らない”など品質に問題がある菌糸マットを使用しつづける必要はない。また、品質に問題がなくても”欠品”が多く、幼虫の入れ替えに間に合わないなどの場合は躊躇せず、できる限り早く、もっと優秀なメーカーの製品に換えてしまおう。 いずれ、問題の多い菌糸マットを使用している方は、他メーカーの優秀な製品に切りかえるしかない。悪い製品を使用しつづけるより、良い製品に変えた方がはるかに安全である。 私自身は菌糸ビンの製品交換は可能だと思っている。極端な表現を見するならば、メーカー側が他社製品への切り換えを禁止しているのは、自社製品を使用させ続ける”詭弁”と思っているくらいだ。 次ぎの項では、私が行った入れ替え実験並びに私の友人が行った実験についても併せて披露する。 G菌糸ビンの製品変更実験とその時点の製品評価 ここでは菌糸メーカー名も記載するが、この実験は2〜3年前のデータであり、実質的に悪い印象を与える又は与える可能性のあるメーカーの菌糸マットもそれ以後改良された可能性もあるので、現在のものではないことをご理解頂きたい。 また、私自身の菌糸マットを使用する能力などのノウハウもその時点から比べれば大幅に向上している。その時点では能力に欠けていたともいえる。これらについても併せてご理解いただきたい。 @虫研製菌糸ビン→コバヤシ製アドバンス−−−アンタエウス、スマトラオオヒラタ A虫研製菌糸ビン→フジコン製菌糸ビン−−−アンタエウス、スマトラオオヒラタ Bフジコン製菌糸ビン→コバヤシ製アドバンス−−−アンタエウス、スマトラオオヒラタ Cマルサン製菌糸→コバヤシ製アドバンス−−−パラワンオオヒラタ、マレーオオヒラタ 当時の私のペットルームの室温管理は夏が29℃、冬26℃。どちらの季節も今より1〜2℃高かい設定であった。 私の菌糸ビン飼育は「虫研」から始まった。当時、虫研はクワガタ飼育の先駆者で菌糸ビンでも有名であったが、私の飼育環境と幼虫の種類には適合せず、特に夏には大半の幼虫が菌糸マットに潜らず、運良く潜ってもすぐ出てきてしまう状態であった。”逆さ保存”も冬には有効性を発揮したこともあったが、夏場は効果がなかった。 そこで、フジコン製に変更。やや改善したが、やはり同じ問題が発生していた。ちなみに、両社のビン材質は”半透明樹脂:ポリ・ビン”、今でも同ビンを使用しているらしい。 多分、室温の問題であったと思うが、メイン飼育の熱帯魚への問題から室温を低下させなかった。やむを得ず、知人の紹介でコバヤシ製アドバンスに変更することにした。 そのときの効果は想像以上のものであった。 当時から発酵熱や菌糸が高温に弱いことや発酵熱については知っていたが、ガラスビンとポリビンの放熱の違いは知らなかった。実際に熱帯魚用水温計で測定してはじめて分かったことである。 菌床マットの水分量や材質(粒子の大きさ)についても、以上の3社を比べながら、発酵マットの作成と併せて研究を続けた結果で身につけたものだ。 マルサンは価格が安く、安定していると一時評判になった製品だった。ビンの素材は”透明樹脂:ペット・ビン”。冬季のみの使用に留まったこと、使用した種が違うことなどから確定的なことはいえないが、少なくても記載した条件での死亡率は虫研やフジコンより少なく、潜り込みも良かった。結果的に交換時期に品切れが発生し、入手できないことがあって、コバヤシ製アドバンスに変更することになったので、最終的に♂の成虫を羽化させていない。 以上は、私が行った菌糸マットの途中入れ替え実績であるが、どれも問題なく入れ替えできたことだけは間違いないものである。 続いて、私が行った実験以外に友人が行った入れ替え実績を記載する。クワガタ幼虫の種類は特段の記述がない限りアンタエウス、タイワンオオクワ、スマトラオオヒラタ、ダイオウヒラタのうちのいずれかであり、明確な種の確認はしていない。時期は10月以降6月までの期間内。入れ替え時の幼虫の齢数は2齢以上、3齢中心。 @コバヤシ製アドバンス→マルサン製菌糸 Aコバヤシ製アドバンス→コバヤシ製発酵マット Bマルサン製菌糸→コバヤシ製発酵マット 私はAで羽化させたタイワンオオクワ成虫♀1匹44mmをいただいたが、個体的な問題は全くなく、繁殖に使用した。また、同条件の同種幼虫♂もいただくことができたので、この個体はコバヤシ製アドバンスに再投入してた。現在羽化したばかりであるが、70mm以上あるきれいなグランディスタイプの個体となっている。 Bで羽化させたダイオウヒラタ成虫を2匹もらったが、別に異常はなくサイズも75mm程度であった。この条件の成虫(一部はもらったまま発酵マットで羽化)ではタイ及びラオスアンタエウスも頂戴しているが、餌不足個体以外は順調に羽化し全く問題はなく、現在繁殖に使用している。 何はともあれ、友人は菌糸ビンに入れた幼虫を発酵マットに入れ替えているが、少なくても、私が頂いた個体をみる限り何ら問題はないことだけは間違いはなかった。 4.室温管理及び保管場所選定 既に、何回も述べた通り、菌糸は高温に弱い性質がある。30℃以上の高温ではほぼ死滅してしまうと思って良い。逆に低温ではとうかというと、冷蔵庫での保管結果から10〜15℃程度が一番長く菌糸が維持されることが判明している。 以上を踏まえた実験結果から、幼虫の成長と菌糸マットの状態を維持する両面から判断した実飼育においては、15〜25℃が最適だと判断するに至っている。 もちろん、投入する幼虫の種やビンの材質によって若干の程度の違いはあるだろうが、この温度範囲内で季節による緩慢な温度変化が起こることには、菌糸ビンで育成できるほとんどの種に対応できるものと思う。多分、良い成虫がとれることだろう。 しかし、現実的にこの温度を維持するには、エアコンのきいた室内で飼育するしかない。冬は何とかなってもエアコンを使用しないで夏を乗り越えることはなかなか厳しい。特に、樹脂系のビンでは、ガラス・ビンよりさらに厳しくなることは明白。実際に私が計測した両ビンの温度差では1〜3℃樹脂系が高くなるのである。 ちなみに、私の友人は夏期の間、ガラスビン使用のコバヤシ製アドバンスを床下に保存して事無きを得ている。 以上から、夏場にエアコンを使用しないで乗る切るためには@ガラス・ビンを使用するA床下など通気性がよく比較的低温な場所に保存するB菌床マットの発酵熱が少なくなったものを使用する。 つまり、ビンに投入した直後の菌糸を使用しない=菌糸が安定したものを使用する。などであろう。そのほかには前項などで記載したマット自体の粒のサイズ、水分量、詰め方などを適切に行う必要もある。 これら諸条件を上手く設定した上で飼育可能な気温は、最終的に5〜29℃程度ではないかと思うに至っている。 |