〜産卵木解説〜
飼育・繁殖ページ同様に、ここでオオクワ類と記述しているものはオオクワガタとヒラタクワガタを指していることを最初にご理解頂きたい。
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オオクワ類を繁殖させるためには「産卵木」は必要不可欠である。
普通、私たちが入手できるクワガタの産卵木は、椎茸栽培に使用された”ほだ木”と呼ばれるものを12〜16cmに切ったものが中心である。
正確に説明すると産卵木は椎茸菌糸が廻って痛んだもの。つまり、椎茸菌が木のもつエキスを吸収し、朽ちかけたものなのである。
逆な表現をすれば、椎茸生産者にとっては高品質な椎茸が栽培できなくなった捨てるべきクヌギやコナラの廃材なのである。では、いったい何故にその廃材がクワガタの産卵に適するのだろうか?そのことにこそクワガタの繁殖生理が隠されている。
通常、オオクワ類が産卵床として第1に選ぶのは、カワラ茸(シハイ茸)が付着し、朽ちかけたクヌギ、ナラ、エノキなどだという。自然界では椎茸菌が付着した朽木はないに等しく、人為的なものだけのようだ。よって、自然界ではこれに産卵するオオクワ系はいないようなのだ。
長くなるので、結論を急ぐことにしよう。
1.茸菌とカビ菌
なぜ、クワガタは茸菌が付着した朽木を選択し産卵するのだろうか?
結論からいって、クワガタ類はカビ菌が嫌いである。カビ菌そのものなのか、それから発生する酵素がなのか、それともそれが出現する環境がなのかは知らないが、生物のほとんどがそうであるようにカビが苦手である。
カビ菌と茸菌は近縁な菌体である。それらの性質を考察して基本的なクワガタの繁殖に適合する産卵木を探ってみるこことする。
それが枯木であっても有機物であることには変わりはない。これを最初に分解させるものは、カビ菌や茸菌である。
通常、水分が多く日陰の環境下ではカビ菌が付着する可能性が高く、水分が少なく半陽性の環境下では、茸菌が付着する可能性が高い。
そして、これら菌の特性として、ある一定の領域を確保(蔓延)した菌は、他の菌を寄せ付けなくなる。つまり、茸菌が蔓延した朽木にはカビが繁殖しなくなる。
ゆえに、私はオオクワ類がカワラ茸を選択するのは、カワラ茸の臭いと自己の好む朽木は同じものであることを知っているのではないかと思うのである。
そこで、私たち飼育者としては、少なくても両菌の性質を理解しクワガタの繁殖・幼虫育成に使用する産卵木や菌糸マットを選択・管理しなければならないのである。
上記を理解すればするほど、クワガタの産卵・幼虫育成に”椎茸のほだ木”が適合していることが理解できる。
椎茸の栽培農家が使用した廃材はたくさん排出される。最初にこの廃材をクワガタの産卵木とすることに目をつけた方はすごいと思う。
2.クワガタは茸菌を食しているのか?
クワガタがカビ菌を嫌うことは間違いないと思うが、それでは好むといわれるカワラ茸などの茸菌を食しているのだろうか?
本題に入る前に、私が行った次ぎの実験と結果を披露する。
@クワガタの♀が齧った産卵木のクズ(以下:クズ)を集めて1箇所にまとめてビンに入れ(観察ができるように)一方を残して菌糸マットを覆うように詰め込んだ。
結果=クズには菌糸は廻らない。
A菌糸ビンに投入した3齢幼虫が通りぬけたと思われる削りカス(以下:カス)を取り出し、それを瓶詰めにした。
結果=カスに再度菌糸が廻ることはない。
B菌糸マットに投入した幼虫が食したと思われるカス、つまり糞を新しい菌糸マットに混ぜて再度瓶詰めした。
結果=菌糸が廻らない。
、以上の実験のほかにもいくつかの実験を行っているが、ここで公開するデーターで私の考えを十分ご理解をいただけると思う。
以上の結果を要約すると
@♀親は茸菌やカビ菌などを寄せ付けなくなるような物質又はバクテリア、酵素などを体に蓄えており、産卵木を噛み砕くときにそれを排出するのではないかと思う。何らかの拍子で成虫の♀が口から黒っぽい粘液を出すことがあるが、この粘液がこの物質ではないかと思っている。
結果として、♀親が齧って処理したマットに産みつけられた卵はそのマットで真菌やその他バクテリアから守られて孵化し、また孵化したての幼虫はそのマットを食うことによって危険な菌を体にとり入れることなく成長するのではないかと思うに至ったのである。
通常、生オガを加水するとカビが生えてくるが、成虫を入れてしばらくするとカビが消えてしまうことも実体験している。
多分、成虫の糞にはカビのほかバクテリアなども駆逐する何らかの物質があると思っていい。私は、成虫の飼育に使用したこの糞まじりマットを幼虫用の発酵マットの作成に使用しているが、カビの発生を抑制する効果を確認している。
A朽木を主食とする幼虫は、朽木に多量にあるセルロースを分解する必要がある。
成虫と同様に幼虫も何らかの拍子に口から黒っぽい粘液を出すことがあるが、私はその粘液で、セルロースを分解し、同時にバクテリアを駆除するのではないかとも考えている。一時的にであっても幼虫が通過したと思われる菌糸マットから菌糸が消えるのはそのためであると思う。また、糞にも菌糸やカビが発生しないも同様の効果であろうと思われる。
また、この幼虫の糞も成虫と同様にカビの発生を抑制する効果を確認している。
結論として、♀親はカワラ茸など茸菌の発生した朽木を選んで産卵こそするが、そのこと自体は幼虫に茸菌が食料として必要なわけではなく、茸菌が発生している朽木が食するに適することによるものであって、むしろ茸菌自体は有害ではないかと思っている。
それでもそれを選んで産卵するのは、自然界では無菌状態の朽木などは皆無であり、彼らにはその菌を駆逐するものが備わっているからではないか?と推測している。
2.他の菌によるカビ菌の駆除
ここで、もうひとつのカビ対策を考察してみたい。
最初から卑猥な表現で恐縮だが、女性の性器は高湿度と日陰というカビの繁殖には好都合な環境だと思うのが、通常の状態ではカビは繁殖しない。
なぜだろう?
実はカビ菌を食う細菌である乳酸菌など酸性菌(バクテリア)がそこに付着しているからなのである。
よって、女性の性器は洗い過ぎるてはいけないのだ。アルカリ性石鹸を使用することは極力避け、酸性を維持しておかなければならなず、ましてや抗菌性下着なんてとんでもないことなのである。
話しが横道にそれたが、この乳酸菌など酸性菌を幼虫飼育に活用したものが、”発酵マット”であり、茸菌によってカビ菌を駆逐する理論を応用したのが、菌糸マットなのである。
もし、産卵木と使用したい朽木が何らかの理由でカビだらけになってしまっても、捨てる必要はない。次ぎに記載した方法で使用できるようになる。
これらの実証から、成虫も幼虫も乳酸菌など酸性菌を体内に持っていると推測させるに充分なのである。
3.害虫駆除した産卵木の再処理方法
@加熱処理と再処理
椎茸のほだ木やその他天然の産卵木には、クワガタ幼虫の天敵であるコメツキ虫の幼虫などの害虫が潜んでいることがある。
これらの害虫の駆除をするために、熱湯につけたり、電子レンジなどで加熱処理する方が多いと思う。
この方法は最も手軽で確実な方法であるが、先の記載でお気づきだろうが、加熱処理した朽木は茸菌も同時に死滅してしまう。
加熱処理して無菌状態になった有機物ほど無防備なものはない。この産卵木を水に浸した後、空気中に出しておけばすぐにカビの餌食になってしまう。
そこで、この無菌産卵木を使用するためには、「他の菌によるカビ菌の駆除」を実践する必要がある。
具体的には、上手にできた発酵マットに埋め込みし、発酵マット内のバクテリアを無菌産卵木に移植するのである。
やり方は、無菌産卵木を通常通り、水につけ加水した後、天日乾しする。余分な水分が切れたら、発酵マットに埋め込みするだけでよい。
結果として、カビが付着しているものを使用してはならない。このことを念頭において、産卵木を管理しよう。
A冷凍処理とそのメリット
加熱処理は害虫を駆除する最も有効な方法だが、茸菌など善玉バクテリアも同時に死滅させてしまう。また、人によっては電子レンジを使えない事情や大きな鍋がないなどという方もいることだろう。
通常、虫ならば産卵木を3日程度完全に水没させておけば駆除できるはずだと思う方も多いと思う。しかし、最も被害の大きいコメツキ虫の幼虫はかなりしつこく、なかなか駆除できないことが多い。
実際にこの幼虫を捕らえてビンに入れて実験してみたが、水に浸してもなかなか死なない。タバコの火をつけたままそのビンに入れ蓋を閉めても生存しているほど酸欠などにも強い。
しかし、意外と冷却にはもろいことがわかっている。一番確実な方法は、水にこぬらした産卵木を冷凍させる方法だ。この方法なら善玉バクテリアを死滅させることなく、害虫だけを駆除できる。
冷凍庫でなくても寒い地域の方なら冬に産卵木を水に水没させてから外気にさらしておけば処理できる。私は千葉県の南部に住んでいるが、氷が少しはる程度の時期に水に完全に水没させ7日程度の処理をしているが、今のところこの産卵木を使用して異常は確認していない。
時間がかかり、確実性は低いが、意外とメリットの多い方法だと思う。
4.どんな産卵木に害虫が多いか?
産卵木についた害虫の駆除方法と駆除済産卵木の再生方法はご理解いただけたことと思う。しかし、一方では害虫がいない産卵木まで手間のかかる処理をする必要はないと思うのは当然だ。簡単で楽な飼育を心がけている私にとっては、なるべく余計な処理をしないで飼育・繁殖に結びつけることは常識でもある。
そこで、害虫がいる産卵木を見つけ出す方法をここで紹介する。
産卵木は12〜16cm程度の短く切った朽木だから、害虫(その他の幼虫等)がそこに入り込んでいれば必ず通りぬけた穴が空いているはずだ。
最初に両方の切り口を調べて見よう。穴が空いていれば何らかの虫がいる可能性が高いので取り除いておこう。
続いて、通常通り使用するように浸水させた産卵木の皮を剥いで、椎茸菌を打ち込んだ穴の形状とそれ以外の穴がないかどうか確認し、異常がなければ通常通り適当な保水量になるまで待って産卵木として使用すればよい。
通常、痛み(朽ち)の激しいものほど害虫などの成虫や幼虫が多く、場合よってはコクワなどクワガタの幼虫がいる産卵木もある。柔らかな材を好む種では特に注意する必要がある。
朽ちが激しく”疑いのある”産卵木を集めて、完全に水没させ3〜7日そのままにしておくと腐敗臭がしてくるものやウジのような虫が出てくるものもある。
こういった”痛んだ”産卵木はある種のクワガタには極めて有効だ。前項の処理をして活用をしたい。
5.まとめ
基本的に産卵木とする朽木は、カワラ茸など茸菌が付着する条件、つまりカビ菌が付着しない要件を備えていなければならない。
@広葉樹であること。
A完全に朽ちていること。
B水分量が多くない(適当な水分量)こと。
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各種毎の産卵木選択
このページでは、オオクワ類の各種について、その好む産卵木(椎茸のほだ木)を記載してみたい。しかし、私は原則的にクヌギを使用しているので、コナラにつていは確認していない。よって、以後特別な表現のない限り、朽木の種類はクヌギと理解していただきたい。
各種毎の記述をする前に基本的な産卵形態、幼虫の食性、割り出し等にについて再度検討したい。
基本的に堅い産卵木を好んで産卵する種は幼虫も産卵木の堅い部分を好むようで”芯”にいることが多い。これらの種で注意したいのは、親が産卵木をぼろぼろに齧ってしまい中でせっかく孵化した幼虫が露出してしまった場合のことである。
私が現実に国産オオクワで確認した結果では、♀親(♂親は未確認)がその露出した幼虫を噛み殺しするようなのだ。
その他に♀親が幼虫を噛み殺す種では、軟らかい産卵木に産卵するグランディスでも確認している。
その2種以外の種では、今のところこの事実は確認していないが、基本的に産卵木をぼろぼろにするまで繁殖ケースに入れておくことは得策ではないと思う所以でもある。
但し、産卵木の外のマットにバラ産みする種については、現在のところほぼ噛み殺しの心配はないと思っている。
@国産オオクワ
やや堅めの産卵木が適するようで、あまり軟らかいものだとぼろほろにしてしまう。特に、終生ペアーとして同居させている場合は、より産卵木の被害が大きい。
既に述べた通り、幼虫を噛殺す可能性もあるので注意を要す。可能なら、1〜2週間程度同居させ、交尾したと思ったら、♂をとりだしたほうが無難なような気がする。
越冬した成虫を親に使用するのが良策だが、新成虫を年内に繁殖させる場合は、遅くとも4〜5月頃に羽化させないと間にあわない。
産卵気温は20〜28度必要だが、体内タイマーが働くらしく、通常の状態では冬季には繁殖しない。冬季に繁殖させるには、2週間程度10度前後に冷やしてから室内で加温する必要がある。
Aタイワン・オオクワガタ
本種も国産オオクワ同様でよいようだ。冷却(冬眠)が必要かどうかは未確認であるが、多分その必要はあるだろう。
Bヒマラヤ及びシッキム・クルビデンス
本種も国産オオクワ同様でよいようだ。
Cグランディス
本種は繁殖が難しい種である。軟らかい産卵木を好むようだが、椎茸のほだ木では産卵しにくい。カワラ茸材が有効であることはわかってるのだが、価格が高いので考えてしまう。代用としてほだ木を使用するには”裏技”を必要とするようだ。 国産オオクワ程ではないが、体内タイマーが働くらしい。
幼虫を取ること自体は難しいが、取れれば比較的丈夫で死亡率は少ないように感じている。
Dシェンクリング
比較的軟らかい産卵木が適している。この種は産卵木外にも産卵するので、発酵マットを産卵木の埋め込みに使用する必要がある。
幼虫の育成は難しいと言うが、それほどでもない。他に比べやや死亡率が高いだけに比較的大きな幼虫にしてから割り出しして、菌糸マットや発酵マットに投入すれば、飛躍的に生存率が高まる。
Eアンタエウス(ラオス産)
軟らかく水分量の多い産卵木が適しているが、この種はシェンクリング以上に産卵木外にも産卵するので、優良な幼虫育成用発酵マットを産卵木の埋め込みに使用する必要がある。
また、産卵温度は他に比べ低く、20度程度がいいので、秋頃にペアーリングするのがいい。親、幼虫ともに高温に弱いので、夏はクーラーの必要性が高い。
幼虫はとても大きくなるので、割り出し後に菌糸ビンや発酵マットに投入する場合は餌不足にならないよう管理を十分したい。
Fヒメオオクワガタ
日本の高地に産するだけに、この種も高温に弱い。産卵木はブナの朽木がいいようだが、なかなか手に入らない。
私の飼育個体は2年目だが、昨年は1匹しか幼虫が取れなかった。椎茸のほだ木では産卵が難しいようだ。
Gコクワガタ(国産)
中程度の堅さの産卵木でよい。産卵はするが、意外と幼虫の育成は難しい。発酵マットの水分量は成長に合わせて変化させる必要があるようだ。
菌糸ビンでも実験したが、良い結果はない。
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産まないものへの対策(裏技)
椎茸のほだ木では産まないものもいる。こういった種には前項で論じた「加熱処理と再処理」が意外と有効な場合がある。
また、その処理と合わせて、ビタミンEの添加やグルタミン酸も有効だという。具体的には、熱帯魚用で販売されている産卵促進剤や味の素を水に溶かして産卵木を加水する。私自身は前者の方法を取ることもあるが、後者については実行したことがない。
今後、熱帯魚用のPH低下にも使用される「リン酸」の使用を計画している。これは食品添加物として販売されてるが、酸性が強いだけに分量は難しい。
これらの酸の使用は、有効酸性菌の繁殖などに都合がので、ひとつの手法にはなるかも知れない。
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病気?らしき幼虫の発見と加熱処理の有効性
以前、軟らかめの産卵木を注文したら、かなり痛んだものが届けられたことがあった。もちろん虫食いを確認したものは、前記の加熱処理と再処理を施し、虫食いの確認できないものは、通常の加水のみを行った。
その産卵木を各1本づつグランディス、アンタエウス、パラワンオオヒラタ、マレーオオヒラタに使用した。
ところが、通常の加水のみを行った産卵木でとれた両オオヒラタ幼虫の約1/3に異常があることを発見した。透明に近い体色をしていて、どことなく元気がないのだ。これを育成した結果はほとんどの幼虫が★になってしまったが、一部は2齢まで成長した。その幼虫はしわしわ状態で成長が止まり全て★になってしまった。
一方、加熱処理した産卵木からはそれらの幼虫は全く産まれなかったし、オオクワ系では通常の加水のみを行った産卵木からとれた幼虫に何ら異常はなかったのである。
多分、何らかのバクテリアか寄生虫がとりついたものと思うが、いずれにしても加熱処理は意外な面で、利用価値があることを感じさせた出来事だった。
もし、ご覧になった方で、この幼虫たちがかかった病気?について何か情報のある方は、ご一報下さい。 |