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私的CITES考 そのT そのU 
2003/12/15修正

私的CITES考
〜ペットが無価値になる日…U類種でも登録準備を

 みなさんは、2002年11月に開かれたワシントン条約(CITES)会議で、キエリボウシインコなどが付属書Tに格上げされたことはご存知だろう。
 「価値が上がった」といって、一部の飼育者やショップの方が喜んだという話もある。しかし、それらの種を飼育している一般人にとっては災難が降ってわいたに等しい出来事で、喜ぶのはそれなりの書類を持つ方に限られる。
 つまり、T類種になると原則的に商取引が禁止される。この禁止措置は、その種が輸入された時期を問わず、国内にいる(考え方によっては国外の個体をも含む)全ての生体のみならず死体や羽などの臓器にまで及ぶ。それまで何の書類もなく売られていたU類種やV類種(以下、U類種等と記載)が、である。
 当然、何もしなければ、その日を境にして、たとえ無償であっても他に譲り渡すことができない。もちろん、一般的なショップがそれを引き取ることはないので、その個体は事実上の無価値となったのである。
 無価値になったこと自体は、一般の飼育者にとっては大した意味がないとしても、オウムやリクガメなどは長命である。少なくても30年以上の寿命がある彼らの最後を見届けることは容易でない。その間に独身だった飼育者の方は結婚し、子供が生まれるかも知れない。その結婚相手や生まれた子が鳥アレルギーだったら---私のような50歳近い者だったら---しかし、飼育できない問題が発生しても “登録票”のないT類種は、基本的に譲り渡すことができない。
 それを可能にするには、特別な申請手続きを経て「登録票」を入手する必要があるのだが、そこには大きなハードルが待ち構えている。

 ここで、ワシントン条約(以下、ワ条約)とそれに関わる国内法である「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(以下、種の保存法)について簡単に説明したい。
 ワ条約は絶滅の恐れのある野生動植物の保護を目的に国際取引を規制する国際条約であり、指定する野生動植物は危惧レベルに応じて付属書T〜Vに分類される。一番危惧される付属書Tに記載される種(以下、T類種)は商業取引禁止、付属書Uに記載される種(以下、U類種)では輸出国の許可が必要になり、付属書Vに記載される種(以下、V類種)には原産地証明が必要となる。
 しかし、ワ条約は国際間取引の取り決めであって、加盟国個々における国内取引にはばらつきがある。
 日本の場合は“種の保存法”で国産種を含め、ワ条約の指定種も規制しているのだが、政府(環境省)の運用は厳しくなる傾向にあり、事実上登録できなくするがごとき書類を要求している。
 その原因は密輸問題である。既に述べたとおり、ワ条約で保護される種はその危惧レベルが高くなるほど希少性が高くなり、T類種にあっては、輸入が止まり流通しなくなる=価格があがるという、経済の必然性が商業取引禁止の“裏”に存在する。
 禁止された取引を認める唯一の手段は登録票を取得することなのだが、既にT類種となったものは、国際的な認可を得た“指定繁殖場”が繁殖させた個体(オウム目としてはオオバタンとニョウオインコだけ?)を除いて輸入されることはないので、それらの種を除けば登録票を受けられる可能性のある個体は、@T類種となる以前に輸入された個体、A国内で繁殖された個体、のいずれかしかありえない。
 しかし、繁殖後進国である日本にはAは極めて少なく、大多数は@になるはずなのだが、先に述べた経済の必然性ゆえに、T類種となった以後に密輸入した個体を登録しようとする者もいる。
 結果として、種の保存法を運用する環境省/自然環境局/野生生物課(登録申請先:自然環境研究センター/CITES事業部)の担当者が言う「国際的な信頼を得るためにも安易に登録票を交付することはできない」となるのだ。
 一方、U類種等であってもワ条約が指定する絶滅危惧種であり、輸入する際には上記官公庁への申請(事前協議というらしい)のほか輸出国の許可が必要だ。そして、通常通り@通関許可書、A関税の納付などが行われ、国内に持ち込まれる。
 これらの書類こそ、後々その種がT類種となったときの重要な“客観的証拠” 書類となることを覚えておいて欲しい。
 今後も今回のキエリボウシインコやヒラオリクガメなどと同様にU類種からT類種になる種が増える可能性は、多いにありえると思っていいだろう。
 よって、今後、私たち末端の消費者がU類種等を購入検討する際には、それらの書類が添付されることを条件にしよう。そして、必ず納品書か領収書を受け取ろう。それらは登録票を得るためだけではなく、密輸の追放やその種の保存・保護につながるものだから‐‐‐。

 ここで、具体的な登録票の取得方法などについて、前述の官公庁と私のやり取りなども加え、両者(法運用者と飼育者)の立場の違いやワシントン条約と種の保存法の趣旨などについて私なりの検討を加えたいと思う。
 既に述べたとおり、U類種がT類種になってしまうと原則的に輸入されなくなり、登録が可能な個体は“そうなる前に輸入された個体”、“国内で繁殖された個体”のいずれかになる。@の個体は「条約適応前に取得された個体」と呼ばれ、輸入(取得)時点でT類種でなかった個体であり、その登録申請には@個体写真、A取得の経緯書(流通経路)、B譲受けた際の納品書又は領収書若しくは譲渡証明書(流通過程全ての)などの私的書類のほかに公的機関が発行したC貿易関連書類(通関許可書、関税の納付書、輸出国からの輸出許可書など)が必要となる。
 このうち@〜Aまでの私的書類を揃えるのは難しくないが、Bの流通経路全ての領収書、特にCの貿易関連書類を揃えることは、一飼育者にとって不可能に近い。
 なぜならば、既に記載した通り、U類種等を国内に輸入した業者は国内取引において、それらの書類を添付する義務がないので、ペットショップにはそれらの書類がない。ゆえに、消費者である私たちにそれらの書類が渡ることはないのである。
 それなのに、政府は私たち末端の消費者にそれらの書類を求める。これを不都合だと思わないほうがどうかしている。
 しかし、法を運用する官公庁の立場からみたら、密輸など不正が後をたたない状況下、登録申請個体が適法な手続きを経て輸入された個体であることを確認する必要があり、それが客観的な証拠となる“公的機関が発行”した書類なのである。
 ところが、国内法である種の保存法では、ワ条約のT類種だけが規制の対象となっており、U類種等は規制対象とならない。そのことが、希少種はもちろん、私たち一般の飼育者を悩ませる元凶なのである。

 2003年9月末現在、私はT類種であるシロビタイムジオウムを10羽登録している。そのうちの5羽は国内繁殖個体(内4羽は我が家産)、1羽は条約適応後に輸入された個体(現在は輸入不可だが)、残りが「条約適応前に取得された個体」である。私がここで申し上げたいのは、一介の飼育者でも希少種と呼ばれる種の繁殖に成功している者がいる事実である。
 ところが、漸く繁殖に成功してもその親が登録個体でなければ、その子も登録できない現実が待っている。そして、登録できない個体は、官公庁の担当者が「飼っているだけなら問題ない」という陽の目をみれない“地下個体”になる。
 そこで、ワ条約の提唱国であるアメリカに目を移してみると、インターネットでみるT類種の価格が安いことに驚かされる。しかも、何の制約もなく国内取引されているようなのだ。彼の国は不法移民の子であっても「国内で生まれた子は国民」との考えのもとに市民権が与えられる。そして、その親にもその子の保護者としての滞在資格が与えられると聞く。人と同様に動物にもその考えがあるようなのだ。
 しかし、密輸については厳しく、スッポンモドキを同国に密輸した日本のある業者は現地で実刑を受けたという情報もある。
 もっともスッポンモドキは原産国のニュージーランドやオーストラリアでは保護動物に指定され、輸出禁止処置がとられていると言われているが、なぜか、日本には大量に輸入され安価に売られている。これを日本のショップでみたアメリカ人が「なぜ、その種だけドルで表示されているのか?」と質問したという、笑い話もある。話が横道に反れたが、輸入に厳しいアメリカでは許可が取れないその種も日本では素通りなのだ。
 このアメリカと日本の違いはなんだろうか?やはり、私たち末端の消費者(飼育者)に用意できない書類を求める日本の “登録制度”には疑問を抱いてしまう。
 もし、それを要求するのであれば、輸入事業者以下の販売者に対し、それらの書類を添付させる義務を負わすのが先決ではないだろうか?
 また、繁殖の可能性がある生体にあっては、現在国内にいる個体数や動向などを管理する上でも登録を促進すべきであって、現行の登録を阻害するような法運用はすべきでないと言いたくなってしまう。
 多くのペットを輸入に頼る繁殖後進国の日本と繁殖個体を輸出産業にまで高めているアメリカ、それぞれの国内法とその運用が原因のひとつであると思われてならない。
 地下個体が減ることによる流通量の増加は繁殖意欲のある飼育者の取得機会を増やす。国内の繁殖個体が増加すれば “ないものねだり的な密輸入”が減るなど登録制度を廃止して、アメリカのように国内取引については自由化しても問題ないような気がしないでもない。
 やはり、新しい法律ができるたびに天下り先として外郭団体を作ってしまう官僚天国日本。掛け声だけに終わらてもらいたくない行政改革が “種の保存法”にもありそうだ。
 だから、廃止できないのなら、末端の飼育者が現在飼育する個体の密輸入を疑うより正規の輸入を経たものとみなし、むしろ登録を義務付けさせる“登録促進策”をお願いしたいところだが、そうすると密輸個体の不正登録申請が増加する可能性が高くなるだろう。
 それらを鑑みると、アメリカ式の国内取引自由化策がよさそうだが、消費者保護の文字はあってもその声は常に弱い。それ以前に“需要あるところに業あり”の喩え通り、密輸も需要に起因する。つまり、私たちが希少種を欲しがることが全ての問題の始まりなのである。
 それでも、私は種の保存法の運用担当者に申し上げた、「U類種もワ条約の規制種だから国内取引が自由なのは極めて不自然。その密輸を疑い、過去に輸入された個体の登録に消費者の手に届かない書類を要求するのなら、業者に対し、あなた方が望む書類を添付して販売する義務を負わしてもらいたい」と。
 しかし、今のところ私の声は届いてはいない。消費者(飼育者)に加わる法は厳しくなる一方だ。
 だから、これからU類種を購入する際には、ショップに対して“輸入関係書類”を要求すべきだ。多分、カネを払う前なら彼らも熱心になるハズだ。もし、それが添付されないのなら購入してはならない。
 これこそ、自己と購入した動物の将来を守るための消費者としての自己防衛になるだけではなく、密輸をなくし、原産地の個体保護にも繋がる飼育者としての義務でもあるだろう。
 問題の「条約適応前に取得された個体」で輸入関係書類がないT類種の登録については、その個体が飼育下での繁殖個体である証明として@足輪がある。次に、ショップからのA納品書又は領収書(購入日、種名記載のもの)。この二つだけでも揃えられれば、一先ず申請先に相談してみる価値があるかも知れない。
 その他にも輸出業者からのインボイス(学名記載)なども公的機関の証明書の代用になる場合もあるらしいので、諦めずに購入したショップや輸入業者などに頼んでみることだ。
 輸入業者がそれらの通関書類の提出を拒んだり、廃棄してしまった最悪の場合でも国土交通省に対し飼育者が輸入業者に代わり、その再発行を求めることも可能らしいので、根気強く流通経路を探ってみる価値もあるだろう。

 なお、今回T類種となった@キエリボウシインコ(一部の亜種を含む)、Aオオキボウシインコ(オオキボウシモドキを含む)、Bヒメヤマコンゴウインコ、Cヒラオリクガメなどについても法律運用は緩和されいないようなので、なるべく早めに必要な書類を揃え登録申請することをお勧めしたい。遅くなれば遅くなるほど書類が揃わなくなる。
 与論であるが、私が飼育するシロビタイムジオウムの国内で繁殖した個体の登録数は平成13年度度末現在6羽である。それを多いと思うか、少ないと思うかは別にしても、その内訳は私の3羽と私の友人の3羽が全てである。もちろん、繁殖に成功された方は外にもいるだろうが、未登録である限り、それらが表にでることはない。
 官公庁の担当者は云う「国内の繁殖個体が増えても原産地の個体が増えることはない」と。
 それでも、「その希少種が増えるだけマシだし、そのチャンスも広がる」と応酬したいところだが、私たちワ条約種を飼う日本の飼育家の多くは、今まで積極的な繁殖をしてこなかった。ひたすら輸入に頼り、“飼い殺し”個体を増やして来たのが実情だ。
 多くの野生動植物が絶滅の危機に瀕している状況下、飼育者側の理屈をいくら並べたとしても何らかの規制は止むを得えない。既に、それらを輸入に頼る時代が終わろうとしている今、私たち日本の飼育家はそれらの希少種を国内繁殖させる努力が必要だ。そのためにもT類種の登録やいつT類種になるか分からないU類種においては、その準備が必要なのである。
 そういった意味において、私は今後繁殖で得たシロビタイムジオウムを分譲する用意がある。また、私の友人はその他の希少種の繁殖にも成功し、交換などで仲間内に分けるという。私たちはこれらを自分の物だけにすることはない。いや、できない。50歳に近い私たちがどんなに頑張ったとしても今誕生したばかりの彼らを最後まで見届けることなどできるはずもないのだ。
 チョット神経質な小悪魔シロビタイムジオウム、大好きなこの種の国内産が広がるように願い、これからもできる限り繁殖にチャレンジする予定である。

 備 考
環境省/自然環境局/野生生物課 TEL 03-5521-8282
(財)自然環境研究センター/CITES管理事業部 TEL 03-5824-0953

以上、ALL BIRDS 誌 に掲載した原稿(一部修正)より

 

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