| HOME |
|---|
私的CITES考 そのT そのU |
| ワシントン条約と“種の保存法”を考える 欠陥法=種の保存法を切る! 2004年の暮れ頃、ワシントン条約(以下、ワ条約と記載)で国際的な商業取引が禁止されているマダガスカル原産のホウシャクガメを東南アジアから密輸した者が逮捕されたというニュースが流れた。報道された容疑は関税法違反とのことだが、“種の保存法”違反も加わり罪が重くなったハズだ。 ここで、生物の飼育に関わりそうな国内法を挙げてみることにする。 @関税法…財務省 ペットの飼育者には関係ないようだが、輸入生物の通関許可書や関税の納付書などはT類種になった時に必要不可欠な証拠書類になる。 A鳥獣保護法(正式名:鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)…環境省、都道府県 野生鳥獣の捕獲と飼育を規制する。爬虫類飼育者には関係ないか? B文化財保護法…文部科学省 天然記念物と表現される希少種(あるいは個体)などの保護が目的。国産の爬虫類を飼う人にも関係がないとはいえないが、天然記念物に手を出しちゃダメ! C検疫法…厚生労働省 主として人に関わる感染症の防疫が目的 具体的には人種をはじめとする哺乳類や鳥類が対象、輸入禁止もネズミとコウモリでは爬虫類に関係ないか。検疫でダニや腹の中の寄生虫も調べるのかな?(笑い) D植物検疫法…農林水産省 農産物に被害を及ぼす外国産昆虫類の検疫が目的 昆虫以外には水や土、爬虫類としては餌となる昆虫を問題としており全く関係ないとは言えないが。 E動物愛護管理法(正式名:動物の愛護及び管理に関する法律)…内閣府 ペット化されたものを含めた動物全般への愛護や飼育管理方法の規制、動物取扱業(ペットショップなど)の登録規則なども。管理分野で市町村特別区の条例“指定動物”があり、爬虫類飼育者にも関係が深い。 F種の保存法(正式名:絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)…環境省 ワ条約と深い関わりがあり今回のテーマ。 (更新)G外来生物法(正式名:特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)…環境省 2005年6月新設。爬虫類でもカミツキガメをはじめ相当数が指定されている。詳細は環境省のこのページで。 以上の法律のうちAは主として国内にいる野生種を対象とし、Bでそれらに飼育改良系在来種が加わるが、いずれも主として国内種を対象としている点では共通する。もっとも天然記念物の中にはインド周辺を原産としながら国内に定着した“越谷のシラコバト”のような鳥もいるし、相思鳥のように本来は海外原産種でも国内で繁殖定着してしまえば、飼育することには問題がなくても、捕獲行為には違法性がありそうなので、厳密に国産種だけを対象としているとは言い切れないが…それも法律の矛盾点か? 早速、ワ条約と種の保存法について簡単に説明する。ワ条約は絶滅の恐れのある野生動植物の保護を目的に国際取引を規制する国際条約であり、指定する野生動植物は絶滅危惧のレベルに応じて付属書T〜Vに分類される。最も危惧される付属書Tに記載される種(以下、T類種)は商業取引禁止、付属書Uに記載される種(以下、U類種)では輸出国の許可が必要になり、付属書Vに記載される種(以下、V類種)では輸出国の原産地証明が必要となる。 しかし、ワ条約は国際取引の取り決めであって加盟国個々の国内取引を規制するものではない。よって、国によっては国内取引に規制のないものや規制の強い国など多様なのである。 日本の場合は、既に述べたとおり“種の保存法”でワ条約の指定種も規制しているのだが、その規制の範囲はT類種に限られ、U類種とV類種(以下、U類種等と記載)には及ばない。これが本法律の欠陥と矛盾であり、密輸されたU類種の販売を野放しにし、また国内にいるT類種を絶滅させうる要因にもなっている。更には、希少種を繁殖させようとする者にとっての障害にもなっている。 一方、ワ条約で規制される種は絶滅の危惧レベルが高くなるほど希少性が高くなり、T類種にあっては輸入が止まり流通しなくなる=価格があがるという、経済の必然性が商業取引禁止の“裏”に存在する。 既に述べた通り、T類種になると原則的に商取引が禁止される。この禁止措置は、その種が輸入された時期を問わず、国内にいる(考え方によっては国外の個体をも含む)全ての生体のみならず死体や甲羅などの臓器にまで及ぶ。 当然何もしなければ、その日を境にして、たとえ無償であっても他に譲り渡すことができない。もちろん、一般的なショップがそれを引き取ることはないので、その個体は事実上の無価値となったのである。 無価値になったとしても、それを飼育し続ける限り違法性はないのだが、リクガメをはじめ多くの爬虫類は長命である。飼育できない問題が発生してもT類種は原則的に譲り渡すことができない。 それを可能にするには、特別な申請手続きを経て“登録票”を入手する必要があるのだが、政府(環境省)の運用は厳しくなる傾向にあり、事実上登録できなくするがごとき書類を要求している。 その原因は密輸問題である。既にT類となった種は、国際的な認可を得た“指定繁殖場”が繁殖させた個体(爬虫類としては一部のワニだけかも?)を除いて輸入されないので、それらの種を除けば登録票を受けられる可能性のある個体は、“T類種となる以前に輸入された個体”か、“国内で繁殖された個体”のいずれかしかありえないのだが、先に述べた経済の必然性ゆえに、T類種となった以後に密輸入した個体を登録しようとする者もいる。 結果として、種の保存法を運用する環境省/自然環境局/野生生物課(登録申請先:自然環境研究センター/CITES事業部)の担当者が言う「国際的な信頼を得るためにも安易に登録票を交付することはできない」となるのだ。 一方、U類種等であってもワ条約が指定する絶滅危惧種であり、輸入する際には上記官公庁への事前申請のほか輸出国からの許可が必要だ。そして、通常通り@通関許可書、A関税の納付などが行われ、国内に持ち込まれる。これらの書類こそ、後々その種がT類種となったときの重要な“客観的証拠”書類となることてを忘れてはならない。ところが、U類種等はいったん国内に持ち込まれてしまうと、たとえ密輸入個体であろうと取り締まる法律がない。故に、ペットショップやネットオークションなどには考えられないほどのインドホシガメが並び、更には“輸出割当”に比べ遥かに多すぎるビルマホシガメも売られ、世界から避難を浴びる野生動物輸入大国−ニッポンが出来上がってしまっているのだ。これがワ条約指定種を規制する唯一の国内法(種の保存法)に欠陥があると言わすして、なんと言おう。 種の保存法とは?…登録するための書類 以上を踏まえ、具体的な登録票の取得方法などについて、前述の官公庁と私のやり取りなども加え、両者(法運用者と飼育者)の立場の違いやワシントン条約と種の保存法の趣旨などについて私なりの検討を加えたいと思う。 既に述べたとおり、U類種がT類種になってしまうと原則的に輸入されなくなり、登録が可能な個体は“そうなる前に輸入された個体”、“国内で繁殖した個体”のいずれかになる。前者の個体は「条約適応前取得個体」と呼ばれ、輸入(取得)時点でU類種等だった個体であり、その登録申請には@個体写真、A取得の経緯書、B譲受けた際の納品書(領収書又は譲渡証明書)をはじめ、Cその個体の流通経路全てを証明する書類(納品書)を揃え、更に公的機関が発行したC貿易関連書類(通関許可書、関税の納付書、輸出国からの輸出許可書などのうちの1つ)が必要となる。 このうち@〜Bまでの書類を揃えるのはさほど難しくないが、C以降の書類を揃えることは、一飼育者にとっては不可能に近い。 なぜならば、U類種等を国内に輸入した業者は国内取引において、それらの書類を添付する義務がないので、ペットショップにはそれらの書類がない。ゆえに、消費者である私たちにそれらの書類が渡ることはないのである。 それなのに、政府は私たち末端の消費者にそれらの書類を求める。これを不都合だと思わないほうがどうかしている。 また、国内で繁殖した個体を登録するには、その両親も登録個体でなくてはならない。多くの方が動物を飼うに当たり目標としているのは繁殖させることだと思う。希少種ならば種の保存のためにも繁殖させることは重要なことだと思うが、漸く繁殖に成功しても登録できなければ他に譲ることができない。 環境省の落ち度…必要な書類がもらえない だから、廃止できないのなら、末端の飼育者が現在飼育する個体の密輸入を疑うより、正規の輸入を経たものとみなし、むしろ登録を義務付けさせる“登録促進策”をお願いしたいところだが、そうすると密輸個体を不正登録しようとする申請が増加してしまう。 それらを鑑みると、アメリカ式の国内取引自由化策がよさそうだが、消費者保護の文字はあってもその声は常に弱い。それ以前に、“需要あるところに業あり”の喩え通り、密輸も需要に起因する。つまり、私たちが希少種を欲しがることが全ての問題の始まりなのである。 それでも、私は種の保存法の運用担当者に申し上げた、「U類種もワ条約の規制種だから国内取引が自由なのは極めて不自然。その密輸を疑い過去に輸入された個体の登録に消費者の手に届かない書類を要求するのなら、業者に対し、あなた方が望む書類を添付して販売する義務を負わしてもらいたい」と。 しかし、私の声は届かない。仕方なく業者に“輸入関係書類”を要求すると、前述の通り「義務がない」と拒否される。これでいいのだろうか? もう、読者の方はお分かりになったであろう、ワシントン条約を批准するための国内法である“種の保存法”がいいかげんな法律であるかを…。 種の保存法の欠陥…U類種にも規制を! それでも政府・環境省を動かすのは難しい、更に1歩進んで業界の方にお願いしたい。多くの野生動植物が絶滅の危機に瀕している状況下、私たち飼育者の多くは、あえて密輸個体を買おうとは思っていない。しかし、残念ながら現行の種の保存法では、そのU類種が密輸個体なのか正規輸入個体なのか判別できないのである。 多分、輸出国の許可をとりU類種の輸出割当てに従う輸入業者としても、密輸によって原産地の個体が減少してしまうことを望んではいないハズだ。原産地の個体が減少すれば輸出割り当て数にも影響がでるかも知れない。更にT類種になってしまえば輸入できなくなる。だから、正規輸入個体であることを私たち消費者に知らせてもらいたいのだ。 そのために輸入卸業者の方が小売店に加える書類は、@輸出許可(写し)、A関税の納付書(写し)など通関関連書類のうちのどれか一つで足りる。私たち最終消費者は小売店からのそれと輸出業者から小売店に渡された納品書をコピー(金額部分は黒塗り)してもらい、領収書(種名入り)を受け取る。 このやり方を定着させる意義は大きい。消費者にとっては、T類種になった時の不安が解消され、更に海外赴任にもそのU類種を連れていけるし、また連れて戻ることもできる。 小売店にとっても他店との差別化に繋がり、「売り文句」にもなる。輸入業者にとっても小売店同様の差別化が得られ信頼にもなる。更には、密輸を減らし種の保存にも繋がる。 爬虫類は静かあると同時に哺乳類などと比べ人感染症の問題が少ないなどペットとして現代生活に適合しやすい生物であるが、静かな故に密輸しやすくもある。密輸報道があるたびに私たち飼育者も白い眼でみられ、爬虫類=ダーティーというイメージが拡がった感がある。 そんなイメージを反映してか、近頃は爬虫類人気が低下し、専門店の廃業もあると聞く。人によっては、人気がなくなったほうが爬虫類のためになるという意見もあるようだが、必ずしもそうとは言い切れない。既に、何もせずにその種を維持できる自然環境は少なくなってしまっている。 そして、経済となってしまった生物を守るのも経済あってのこと。売れなくなれば、その種を守り繁殖させる人もいなくなる。場合によっては食料にされ、更には生息地の環境破壊もありうる。 そうならないためには、適正な範囲で市場に出すことも、また一つの道ではないかと思う。のろい政府を待っていても仕方ない、消費者を含めた業界全体の変革によって密輸を撲滅することが先決ではないだろうか。 備 考 以上、Herp Life誌2004年12月号に掲載した原稿(原文:一部修正)より
|