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1994.3.14 朝日新聞
「飛びたい」願い込め作品描く



 20日の表彰式が今から楽しみだ。「本当にうれしい」と素直に喜ぶ。県立美術館で開かれいてる千葉市民美術展のグラフィックデザイン部門で議長賞に選ばれた。応募作品はコンピューター・グラフィックス。3度目の挑戦だった。
 両手が利かない障害をもつ。「もともと機械いじりが好きなので」と、父親が購入したパソコンを見ていて興味を持った。だが、解説書を開くことは出来ない。しかもキーボードをたたくのは足。操作を覚えるまで試行錯誤を繰り返した。
 生活のため、パソコンの技能を生かせないかと考えたこともある。しかし、現実は厳しい。県立養護学校の高等部卒業後、都内にコンピューター関連の仕事を見つけたが、条件は通勤。介護が必要な身では、断念せざるを得なかった。
 「自宅にこもっていては良くない」と、知人の勧めで芸術活動を行う千葉市の障害者グループに入会し、コンピュータ・グラフィックスの腕を磨いた。弱者に優しい町づくりを目標に、障害者と健常者の交流会を結成し、障害者運動にもかかわるようになった。
 「高齢化社会といわれ、年をとれば健常者でも体の不自由な部分が出てくるかもしれない。そんな人たちや私らも安心して暮らせる社会であって欲しい」
 入賞作の作成には1週間をかけた。赤・青・黄色とカラフルに彩られたチョウが、木の葉で羽を休めている。将来の夢は、誰の世話にもならず自力で生きること。作品には「飛びたい」という願いが込められていた。

 

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