1996ウィズエブリワンの紹介

『もっと素直に、もっとやさしく(2)』 アトラクティング・グループ
市原ウィズエブリワン
1996.2.1 掲載

 障害者を支える活動は、家族や関係者が代弁して奔走するのが大半だといわれている。障害のある人もそうでない人も一緒に活動するサークル『市原・ウィズ・エブリワン』は、この点で特徴的なグループ。H3年6月に結成。社会への積極的な関わり、障害者の自立と住みよい街作り、障害者・健常者が同じ立場で互いに助けあい、教えあっていく友達作りが基本になっている。10〜40代の117名、うち障害者は3割。月1回の定例集会を開く。
 今回は役員会におじゃまして、昨年4月に完成させた福祉マップ『エブリワンマップ』を中心に、その活動をうかがった。
 会長の倉田知典さんは、運動機能に重度の障害を持つ。今年26歳、食事・トイレ・衣服の着脱等、普段の生活から介助が必要だという。養護学校高等部の卒業後、地域の障害者運動やボランティア団体に参加したが、「障害者自身の意見や発言の場が少ない」ことを実感した。
 「どのくらい大変か、どれほどつらいかは、たとえ親でも同じようには分からないと思うんです。だから自分たちで伝えていくことが大事だと考えました」
 私たちには何の不便もない環境が、障害を持つ人達にとって、大なり小なり恐怖をともなう場合が多いと、知る人は少ないだろう。わずかな段差、もしそれを段差と気づけなかったら、それを自力で乗り越えられなかったら、家から1歩出た所でつまづいてしまう。それが障害者と社会とをかけ離してしまう要因になる。体が弱ってきた病人や老人にとっても同じことがいえる。
 福祉マップ作りは、その不便さ、大変さをはっきりするために、障害者自身が調査に出かけるという形をとった。今回は公共施設が中心で、障害者のための設備もあったが、なぜか介助の手を必要とすることもあった。狭い幅のスロープ、高い位置にある手すり。健常者の目で作られたものは、使いづらくなってしまうのだそうだ。
 「高齢者社会になりつつある時代、暮らしにくいものはたくさんあります。その意味では、障害者だけでなく、一般の方にも役立つ情報だと思います」と事務局の早崎さんは話す。マップ作りにたずさわった柳沢さんは、「これからマップ利用者の声をひろいあげて改善していきます。企画から発行まで3年もかかり、試行錯誤しましたから。マップを利用して町に出てきてもらって、初めて意義が出てくるので、調べた情報もどんどん出していきたいと思っています」と次のステップを考える。
 このマップ作りは、資料を行政に提示し、改善を要望した結果、大きな成果を上げた。JR姉崎駅東口の歩道の点字ブロック上にあった車止めポールの撤去,JR八幡宿駅に車椅子利用可能なエスカレーターの設置。今後は、小さなことでも一つずつ使いやすくする事を目標に、提言していきたいという。
 「今度のことは励みにもなったし、とても嬉しかった。あとは、作ったものを皆さんに活用してもらうこと。僕らも障害者・健常者の垣根のない交流を続けながら、障害者の自立生活を目指していこうと思います」