No.27
和泉徹(31)
1999.7.31 掲載
『エブリワンに受け入れられた自分』

 私が重度の障害を持つ倉田知典君と初めて出会ったのは、ある集会に参加していた時でした。私は社会人となって間もない頃、倉田君は養護学校の高等科を卒業したばかりの時だったと記憶しています。「和泉さん、ぼくのことどう思いますが?」と、彼はいきなり聞いてきました。それまで障害者とふれあう機会もなかった私は「えー、別に」なんて、さしさわりのない返答しか出来ませんでした。それから何度か倉田君と会う機会があり、彼が他の友人達と冗談をいい、じゃれあっている姿を見かけました。障害者だからといって意識しなくても、普通の友達として付き合えるのだと分かり、今度は僕の方から話しかけてみました。
 「和泉さん、聞きたいCDがあるんだけど、今度借りてきてくれませんか」なんて、彼は人を引き付けるのがとてもうまい。家を訪ねたりしているうちに私たちは親しさを増していきました。ある時、自分が企画したスキー旅行に倉田君を誘いました。他のメンバーの協力もあって実現しましたが、ベテランがいるとはいえ私もスキーは初めて。倉田君を強引にリフトに乗せて連れて行ったものの、強風のためリフトがストップ。緊急でスノーバイクで降ろしてもらうというハプニングもありました。確かに食事や風呂など、大変なこともたくさんありますが、障害者を意識することのない普通の友人です。
 私も倉田君に誘われ、様々な福祉活動に参加するようになりました。彼は以前からボランティア(健常者)と障害者のかかわり方に疑問を持っていました。そんな中から、彼が会長となってウィズエブリワンが誕生したのです。私は仕事が忙しいこともありましたが、最初の2〜3年はあえて参加しませんでした。大変おごった考えですが、彼が精神的に頼ってくると思ったからです。しかし、たまに誘われて参加してみると、本当にいろんな魅力的な人がいて、活気があるのにおどろきました。私自身、違う分野で友達の輪を広げるのにはチャンスだと思いました。
 以来、入会して8年。出来る範囲での活動です。障害者と抵抗なく付き合えるようになるにはどうしたら良いのかと、よく聞かれます。障害者と共に過ごす時間が長ければ長いほど理解も深まります。慣れることです。共感することです。行動してみることだと思います。私も幼い頃から障害者を知り、理解することが出来ていれば、もっと自然に身についていたかもしれません。もし障害者とのふれあいが小学校からの教育に取り入れられれば、大人になって道路やビルをつくる時、設計する段階から考慮できるでしょう。
 倉田君と出会わなかったら、私の人生は今とは違ったものになっていたでしょう。私がエブリワンを受け入れたのではなく、エブリワンが私を受け入れてくれたのだと思っています。


 彼女大募集中 

 

No.26
菅野康彦(29)
1999.7.3 掲載
『エブリワンにもらったエネルギー』

 私の人生にとって、ウィズエブリワンはとても大切な存在です。私は出生時の障害により手足が少し不自由です。といっても障害は軽度で、市原臨海コンビナートの企業で事務の仕事に就いています。
 幼い頃から内気な性格で、今でも対人関係は苦手とするところです。小学校、中学校はみんなで遊んでいれば、それなりに楽しかったのですが、個人と個人のつながりが深くなる高校では、積極的に声をかけられない私には、友達があまり出来ませんでした。しかし、高校卒業後に進んだ情報処理関係の専門学校では、良き友にめぐり合えて楽しい学校生活を送ることができました。
 私には双子の兄がいます。兄は健常者で何の障害もありません。心強く思ったこともあれば、悔しく思ったこともあります。母に対してやりどころのない不満をぶつけたこともあります。そういう時、母に「いつまでも一緒というわけにはいかないのよ。あなたにはあなたの道があるのだから」と言われ、その度に自分を言い聞かせてきたつもりです。
 就職活動をしていく中、障害者の合同面接にも参加してチャレンジしてはみたものの、全部断られました。健常者の中での生活が主体だった私が、健常者・障害者一体のサークル活動しているグループ、エブリワンの存在を知ったのはそんな時でした。特に会長の倉田君との出会いは衝撃的でした。重い障害を持ちながら何事に対しても前向きに取り組む姿勢はすばらしいものでした。私はその姿勢に感動しました。
 エブリワンから私はエネルギーを与えられました。それからは、何事にも積極的に取り組むことが出来たのです。その後臨んだ障害者合同面接で現在の会社に採用が決まったのですが、面接官から「あのときの君のやる気はすごかったね」と後で言われました。また、エブリワンで友達以上の仲間がたくさん出来たことも私に多くの希望を与えてくれました。心の通じ合える友がいることが、どんなに心強いものかを知りました。
 エブリワンは私の人生観を変えてくれました。そのエブリワンでもらったエネルギーをプラス思考に結びつけ、これから生きていこうと思っています。自分の気持ちが前に向いただけで自信につながり、相手の印象も変わってくるようです。今後は会社でも、より良いコミュニケーションがとれるよう努力していきたいと思っています。

 

No.25
板倉朋恵(17)
1999.6.5 掲載
『対等に向き合ってはじめてわかること』

 高校入学後まもなく、私は人のためになる何か新しいことを始めようと思い、社会福祉協議会に登録して個人ボランティアに参加しました。最初、小さい子供たちと遊びたいと思い、家の近くにあるマザーズホームに電話をしたら「ボランティア登録をしてください」と言われたのがきっかけでした。中学生の頃から少しボランティアに関心がありましたが、マザーズホームや福祉作業所がどんな所かもよく分かっていませんでした。
 学校が休みの時を利用して月に2回程度参加。最初のうちはわからないことばかりで、かなりとまどいました。参加しているうちに前回ボランティアで参加した人に、また会ったりして友達になりました。そして、だんだんボランティアが楽しみになっていったのです。でも障害者の人たちとその日いくら仲良く過ごしても、その場限りという感じで先の長い友達づきあいが出来ないのが残念でした。そう考えていたとき、ボランティアに行った先でウィズエブリワンの会長の倉田さんと出会い、ボランティアとは違う友達作りを目的にしているエブリワンに魅力を感じ、入会しました。
 このような活動に参加していると「若いのに偉いわね」と、よく言われます。確かに参加者に高校生は少なく、若くても大学生です。でも私には何が偉いのかよくわかりません。私は好きでしているのに、別に大したこともしていません。エブリワンやボランティアでは大人の人たちがたくさんいて、話をするたびにいろいろなことを知り、学校とはまた違った勉強ができるのです。今私は進学に向けて勉強中です。進路を決定するのにもエブリワンのメンバーのアドバイスがとても参考になりました。最初はボランティア活動の体験を活かして福祉関係に進もうと考えていましたが、私は介護するという立場より障害者の人たちと対等な立場で向き合いたいのです。昔から看護婦さんにあこがれていたこともあって、今は医療関系に進路を決めています。福祉関係の仕事をしているメンバーも、私にはその方が向いているとアドバイスしてくれました。他にも大学の特色や医療療法士に関する情報なども教えてもらっています。倉田さんは「ケアの仕方は僕を実験台にしていいからね」とも言ってくれます。
 前回登場した下川さんは私と同級生です。私が彼女をエブリワンに誘い、喜んで参加してくれました。福祉関係に興味を持っている同級生はあまりいませんが、先日私が使い終わったテレホンカードを集めているのをクラスの友達が知り「集めてるんでしょ」と持ってきてくれました。うれしくて「これだって立派なボランティア活動なんだよ」と言ったら「そうなんだぁ」と意外そうにしていました。
 このようにボランティアとは特別なことではなく、だれにでも気軽にできる身近なことなのです。あまり難しく考えず、ちょっとしたことから福祉に興味を持ってくれる人がいたら良いなと思います。

 

No.24
下川雅美(18)
1999.5.1 掲載
『1人でも多くの人と友達になりたい』

 この春、私は市原高校の3年生になりました。私の足には、小学校2年生の髄膜炎の後遺症で障害があります。少しの距離なら歩行も可能ですが、外では車椅子が必要です。
 私にとって,障害は幼い時からのもの。自然に受け入れていますが、両親の心配は大変だったようです。3ヶ月間の入院生活。その後、養護学校へ通いながらの1年と2ヶ月間のリハビリセンター愛育園での生活。まだ幼かった私は、家に帰れる土曜日が待ち遠しい反面、愛育園ももう一つの家になっていました。今思えば共同生活というもの、年の違う人々や初対面の人との接し方など、ここで学んだような気がします。
 この間、両親は私が車イスでの生活がしやすい様にと、受け入れてくれる小学校を探して引越し。普通校へ通学することには私も母も不安がありました。しかし、転校のその日から雨なのにクラスのみんなが迎えに出て来てくれたり、「乗せて、乗せて」と車椅子で遊んだりしているうちに、仲の良いお友達になれたのでした。そして中学校も地域の学校へ通いました。
 問題は、高校進学でした。私の場合、通学は母の運転する車の送迎に頼らなければならないため、できるだけ近いところで受け入れてくれる高校を探さなければなりませんでした。中3の夏休みを利用して何校か見て回った中で、市原高校に車椅子用のスロープがあるのを見つけました。もしかしたらと聞いてみると、当時3年生に車椅子の男子生徒がいるということでした。私の入学が決まり、不都合な点について要望を出したら、学校は女子用トイレに車椅子でも使用できる洋式トイレを用意してくれました。大変ありがたかったです。友達も協力してくれて、今は勉強や部活に楽しい学校生活を送っています。
 ウィズエブリワンの入会は、高校2年のときに同級生に誘われて参加したのがきっかけでした。学校で障害者は私だけですが、エブリワンには同じ環境の人がたくさんいます。私の障害はまだ軽い方です。重度の障害を持った人でも自分のことをなげいたり、愚痴を言ったりする人を私はこれまで見たことがありません。みんな障害を自分のものとして受け入れ、前向きに生きています。そして自分よりも、もっと重い障害のある人の手助けをしようとしています。障害が重くても軽くても、みんな助け合って生きています。
 私も18歳。運転免許を取って、これまで私のために送り迎えをしてくれた母に楽をさせてあげたいと思います。行動範囲が広がった今、街へ出かけて思います。駅やデパートなどの車椅子に対する配慮は行き届き、大変助かっていますが、街の中は段差も多く、車椅子での移動は大変です。もっと車椅子で気軽に街へ出られたらいいと思います。そしてたくさんの人と交流して、私たち障害者への理解が少しでも深まればと願います。