外房エリアも『ウィズ エブリワン』!
心のハーモニー を合い言葉に
 
2002.4.6 掲載 外房版に掲載

倉田 知典(くらた とものり) さん 「市原市在住」


 市原市に住む 倉田知典 さん(32歳)は、仲間作りの会『ウィズ エブリワン』会長です。ユーモアあふれる明朗快活な人柄に魅了される人も数多く、会員数は7歳〜65歳まで(主に20代中心)の男女148名です。
 倉田さんは8ヶ月の早産が原因で9歳までは寝たきりの状態でしたが、努力の結果、全介添えを要しながらも多少の自力歩行が できるまでになりました。しかし子供の頃から、一つ年上の兄に自分を重ねることも多く、スポーツや恋愛などを自由にしている ことが羨ましかったといいます。

 『エブリワン』では、『障害者』ではなく『障碍者』という字を使います。それは「碍」が「妨げ」という意味で あったのに対し、「害」は文字通り害であり、他人を害するという意味が あるからだそうです。障碍者が決して害ではない ことを、妨げ以外の何ものでもない ことを、くみ取って欲しいという願いが込められています。

 「食事もトイレも自分ひとりでは こなせないし、出かけることも ままならない。『エブリワン』を始めるまでは、孤独で寂しい毎日でした。家族以外で接してくれたのは、福祉職員とボランティアだけ。対等な関係は望めませんでした」。
 そんな思いから抜け出そうと何でも語り合える『本当の仲間作り』を決意。10年前に『ウィズ エブリワン』を発足させました。自分の辛さを語ることで、健常者の理解を求めようとしていた この頃は、「駅にエレベーターを」とか「障碍者を平等に」など と一方的に権利を主張してばかり いて、市長にも強く要望していたと いいます。
 「『健常者』と『障碍者』という心の区別を なくそうと、話し合いが持たれていましたが、ひとりの人間として接するには どうしたら いいかを語る人は あまり いませんでした」と当時を振り返ります。
 『ウィズ エブリワン』は人と人との心を結ぶ出会いの場。定例会などでは、お台場、富士急ハイランド ツアー、ジェフ ユナイテッド 市原の観戦、食事会など さまざまです。活動を続けて いくなかで、本気で語り合える仲間ができたと喜びを感じつつ、『障碍』とか『健常』って何 ? と思うようになったと いいます。「身体が不自由な ことは障碍であるけれども、共通な話題があれば、お互いの心の壁も なくなって いくでしょう」。
 『心のバリアフリー』から『心のハーモニー』へ。「『バリアフリー』って いうけれど、心の壁や自分の欠点を取り除くことは簡単には できません。最初は『バリア アリー(在り)』で いいんじゃない。みんな違って あたりまえ、個性があるからこそ、『心のハーモニー』を奏でようと思うのです」。
 自分の感情を素直にさらけ出せたとき、相手の気持ちも変わります。「倉田さんは、相手の気持ちを引き出すのが上手。普通に おしゃべり していても、いつの間にか悩みを話している自分に気づくときが よくあります。仲間では これを『倉田マジックに かかる』って いうんです」と笑うのは会員の下川雅美さん。
 また、月1回程度、県内外の高校生・大学生、福祉などの職員に対して講演活動も こなします。権利や平等などを一切述べず「みんなの気持ちを分かりたい」と語りかける姿に、聴講者は大変驚くと いいます。「人の気持ちが分かる人に出会えて良かった」という感想を頂いたときが、今までで一番嬉しかったそうです。
 今年秋にはNPO法人化が予定される『ウィズ エブリワン』。「福祉でなく、あくまでも仲間作り『どんな人でも集えるコミュニケーションの会』にしていくのが理想です。マスコミやインターネットを使って全国各地はもちろん、世界中の人との情報交換もして いきます」と意欲を語ります。とはいえ、外房地域の会員は現在3名。ただいま会員募集中。春のイベントも いちご狩り や サッカー観戦など盛り沢山です。
 「人は個性があるから おもしろい。いろいろな人に支えられて お互いに感謝できれば、いい社会だと思いませんか。これから どんな人と出会えるのかワクワクしています」と満面の笑みで語ってくれました。 (本城)