タウン誌『KIRACO』
 (千葉県習志野市 中心 6000部発行)
  2002年1月号

区別は個々の心の物差しによって生じてしまうに過ぎない  ウィズ エブリワン会長 倉田知典

 

 私がタウン誌『KIRACO』を知ったのは、習志野市役所主催のガイドヘルパー養成講座へ ウィズ エブリワン会長 として講師で招かれたのが きっかけです。
 そこで いわゆるボランティアされる側の御意見を ぜひ書いてください と きらこ さんに言われました。
 『KIRACO』のバックナンバーを読ませて頂いたのですが、そもそも私は「ボランティア」とか「バリアフリー」とか いう言葉に普段から疑問を感じております。皆さんは「ボランティア」って何だと思いますか・・。ボランティアの基本的な意味は、非営利で他人を援助し また自己実現も果たすということなのです。
 例えば、健常者同士で気の合う仲間が 5〜6人で旅行に行くとしましょう。そうしますと企画をする人が居て幹事みたいなことをしますよね。また旅費を管理等される係の方も居ると思います。そのことは ごく自然な行動であり、普通それはボランティアとは言いませんよね。けれど何故、障碍者や高齢者等と接する時は、一般的に健常者はボランティアって言うのでしょうか・・。ボランティアという言葉によって、お互いに心の壁を かえって作ってしまうようにも私は思うのです。もしもボランティアの考え方に どっぷり はまるようでしたら、その人自身が見えない心の障碍を持った人だと私は考えます。
 今 小・中・高校等において ボランティア体験学習と言って障碍者施設等に行く機会が増えて来ましたが、生徒達に何を教えたら良いのか・・・と、教員は迷っているようです。しかし学習(学問)ではないんですよね。「心と心の交流」なのに「学問」として とらえている学校教育にも疑問を持っています。また近年、福祉の専門学校・大学等が沢山出来て そこで勉強する人も増えています。けれど そこでは「障碍者の立場になってサービスを提供しましょう」等と教えています。それって障碍者の心を甘やかすことに繋がる恐れもあると思うのです。
 以前、一週間程 私は身体障碍者施設に入所させて頂いたことがあります。食事やその他の色々な介添えをして頂く中で「ありがとうございます」と、感謝を込めて介護職員に挨拶させて頂いたのです。それは人として当たり前のことですよね。そうすると 職員は こう言われました「私達は仕事でやっているんだから、いちいち ありがとう 何て言わないでください」。さらに「尽くしてあげるから何でも言ってね」。これって優しとは思いますけど、とても こわい話しです。気付かぬうちに感謝の気持ちを忘れて行き、障碍者だから やってもらって あたり前 という心になってしまうのかもしれません。人が生きて行く上で周りに感謝して行くことが最大の基本です。感謝の気持ちが無くなっては、真の自立もあり得ないと思います。
 サービスを提供するのが現実の福祉なんです。サービスにはマニュアルがあるわけです。学習や学問はマニュアルです。人と人の心の交流が大切なことなのに、人の心にマニュアルはありません。ボランティア・福祉・教育等は達成するものではなく、人の心と心を結ぶ あくまでも手段に過ぎないのです。教育の現場で行われているのは、あくまでも学習なんです。「学習」ではなく「交流会」を持つ方が望ましいと私は思います。交流会を通じて 真でお互いに心でわかりあえる関係になれると思うのです。
 私は「ウィズ エブリワン」の活動を10年前に始めました。障碍を持つ人と持たない人という枠を取り、互いに個性ある人として尊重し、楽しみ支え合い、継続的な仲間等作りを進めると同時に、福祉等に関する問題点を市民等と共に皆で考え行動し、自立と住み良い街作り活動を行っています。「ボランティア」ではなく「心のハーモニー」社会を目指し、「ウィズ エブリワン」は2002年中には 特定非営利活動法人(NPO)化して行く予定です。 
 平等ということや障碍者等の権利という理念はあっても、一番大切な足元である義務(お互いに感謝し合い尊重し合う心の実践)を行っていない部分も沢山あるように思います。例えば障碍者の中にも人的支援だけを要求する割り切った付き合いをする人も居ます。その他においても要求の強い人が居ます。そんな人に対して健常者は「やってあげる」。また本質的な理念は同じであっても、お互いに目的が少し違うだけで個人や他団体等に対し排他的に言う人も居ます。そのような お互いに対立心に導くような関係では、真の心の交流は存在しませんし、理念は何時まで たっても掛け声だけで終わってしまいます。
 私は障碍、健常、ボランティア等という区別は不必要だと思います。区別は いわば「個々の心の物差しによって生じてしまうに過ぎない」と思うからです。お互いに相手の欠点(区別する)を見るのではなく、お互いの長所を見続けることが大切です。
 私の考える区別の無い真の理想社会とは、理念(学問的に)を熱く難しく皆で語る事よりも、「自らが足元から相手のこと、周りのことをお互いに心から感謝出来、尊重し合い、思い合うことの出来る 実践社会」です。それが「心のハーモニー」です。
 私は毎月1〜2回程度、千葉県内外の関係機関・福祉系団体・福祉系大学・福祉系企業等で講師の仕事をさせて頂いてます。何時も「心のハーモニー」の話しを講演会の仕事でさせて頂くと、受講生の皆さんは驚かれ、心に残る良い話しであると共感してくださいます。健常者とか障碍者とか片寄った見方をせずに、お互いが心で相手の気持ちを尊重して行くことが大切という私の話しが、一番良いと御感想を頂きます。私は それに何時も感謝しています。
 今後とも全ての人々の心の区別を少しでも無くして行けるように、私自身さらに感謝の気持ちで足元から実践出来る自分になって行きたいと思います。


2001年7月4日 朝日新聞千葉版 障害の壁超え友情育て10年

 障害を持つ、持たないという壁を超えて友達づくりを目指す会「市原ウィズエブリワン」が活動を始めてちょうど10年になった。重度の障害を持つ市原市青葉台4丁目の倉田知典さん(31)を中心に友人ら11人でスタート。今では会員数が150人を超える。「健常者と対等な友人関係を持ちたかった」という倉田さんの願いは、ほぼ実現している。

 倉田さんは生まれつき肢体が不自由で、食事やトイレ、着替えが一人ではできない。しかし、パソコンが得意で、ドライブをしてキャンプや旅行に行くのが好きだ。
 「エブリワン」を始めたのは「自分自身がひとりぼっちでさびしかったから」という。兄(33)は「生まれた時から全然違っていた」。多くの友人に囲まれ、高校では甲子園を目指して野球に打ち込んでいた。恋愛の話を聞くたびにうらやましかった。
 倉田さんが小学校から高校まで過ごした養護学校は楽しいけれども、社会との交流はない。卒業後、就職先を探してもどこにも受け入れられず、自宅にこもっていた。養護学校が自宅から離れていたため、地元に友人はいない。仕事もない。半年ほど「ひとりぼっち」だった。
 「当たり前の生活をしたい。ぼくだって青春を送りたい」。そう思って市役所や社会福祉協議会に相談し、イベントに参加した。しかし、イベントが終わると健常者は反省会と称して自分たちだけで飲みに行ってしまう。「僕たちもカラオケに行ったり、電話番号を交換したりしたいのに、障害者はイベントが終わればそれでおしまい」と疎外感を味わった。
 「障害者と一緒に過ごすことは、健常者にとってはその時だけのボランティアなんだ」と気づいた。健常者とも仲良くなりたい、長くつきあえる友人になりたいと、「だれでも一緒に」という思いを込めて会をつくった。
 会では、健常者と障害者が一緒に過ごすことを一番大切にしている。月に一度の集まりは出会いのきっかけ。触れ合う機会が重なると、健常者と障害者、互いの思いが伝わる。人と接するのが苦手で登校拒否だった子の顔が明るくなった。障害を持つ高齢の女性が化粧をはじめた。
 福祉活動にも力を入れてJR姉ケ崎、五井駅周辺を一緒に歩き、点字ブロックの上にあったポールの撤去や、エレベーターの設置を提案するなどしてきた。
 倉田さん自身の活動も幅が広がった。市原市の小、中学校やヘルパー養成講座、ボランティアセミナーなどで積極的に講演活動をしている。県の身障者相談員にもなり、電話などで悩みの相談に乗っている。
 「活動の場は広がっても、エブリワンから始まり、今の自分がある」と、今後もエブリワンを中心に活動していくつもりという。問い合わせは倉田さんまで。

 


2001年5月13日 千葉日報
市原の市民グループ 行政施策への参画
障碍者と健常者、相互理解推進へ

小出市長と懇談し、要望書を手渡す 市原ウィズエブリワン のメンバー

 障碍(がい)者と健常者の枠を超えた交流グループとして幅広い活動を進めている
「市原ウィズ エブリワン」(倉田知典会長、会員約百五十人)の代表が十二日まで
に市原市の小出善三郎市長を訪れ、「互いの理解推進のためにも行政施策への参画や
福祉教育の講師役など話す場をぜひ設けてほしい」と要望した。同会は障碍者と健常
者が対等の立場で交流しながら現状の福祉などに対する問題点を市民や各公共団体と
連携しながら工夫、改善していく活動を続けている。ことしで結成十年、独自のハン
ディキャップ体験などをもとに毎年、行政への要望や提言を行っている。

 

 今回は「真(心)のハーモニーはお互いの対話から…!」を主題に「福祉向上に関する要望書」をまとめ、市には直接持参、県への要望書については取り合えず堂本暁子知事と金子和夫県会議長あてに郵送、「今後面会できれば」としている。
 小出市長との懇談でグループの代表は「よりよい福祉施策を進めるためにはやはり相互理解が大切。計画段階からぜひ障碍者を委員などに参画させてほしい。また福祉教育が授業に取り入れられてくるが、ここでも講師役などに障碍者を入れるシステムを作ってもらえれば、日常生活の体験談などを話すことができる」と話した。実際、倉田会長は重度の肢体不自由ながら積極的に社会参画、エブリワンの活動などを通じ、多くの講師を務めている。
 このほかの要望では市主催のハンディキャップ体験の実施と障碍者や市民の直接参加、JR姉ケ崎駅ホームへのエレベーター設置、重度障碍者自立生活支援センターの設置などを挙げている。
 また「障害者」から「障碍者」への用語改正も同会の強い願い。「しょうがい」は本人にとって「妨げ」にはなるが、他人を「害」してはいない。だから「邪魔なもの」と言う意味がある「害」は使うべきではないはず、としている。

 同会の連絡は早崎 事務局 eve-info@mail.goo.ne.jp まで。

 


千葉日報
2000年5月10日水曜日掲載
障害者の自立生活へ
「支援センターの設立要望」
交流グループが小出市長と懇談
先進市の視察を約束 市原

 障害者の自立生活や社会参加を実現し、人に優しく住みよいまちづくりを目指して幅広く活動している障害者と健常者の交流グループ「市原ウィズ・エブリワン」(倉田知典会長、会員役110人)が九日、小出善三郎市長と懇談した。特に重度障害者が安心して生活できる「自立支援センター」の設立を強く要望、同市長もまず、先進市を視察することなど立ち上げに積極的な姿勢を見せた。
 

 同グループは社会全般の福祉施策として定着をみせてきたノーマライゼーションやバリアフリーの実現を目指し全国の障害者や支援団体などと交流。また定期的なハンディキャップ体験を行い、これをもとに毎年、市への要望を続けており、これまでもJR八幡宿駅を最初に昨年は五井駅と姉ヶ崎駅にもエスカレーター設置を実現した。
 特に「障碍者の自立生活」については昨年も「これからの障害者福祉の最重要点課題となる」ことを行政側に提言、意見交換をしながら先進市などの情報収集を進めてきた。
 小出市長に示した要望によると、重度障害者の自立生活支援センターは全面介助を必要とする障害者が入所施設ではなく、自宅で一生安心して暮らせるための施策で、協力者としてボランティアなどを登録、必要に応じて派遣していくシステム。県内では、船橋市、近隣では横浜市などが設立している。
 倉田会長らは「設立にあたってはまず準備段階から対象となる在宅の重度障害者らを企画立案のスタッフに加え、十分に参考意見を聞いてほしい」ことや「設立後の運営にも同様に障害者を雇用する形で入れる」ことを要望した。
 このほか昨年十月に五井駅周辺で行った歩道調査などをもとに、@渡れる時間の短いイトーヨーカドー市原店前の横断歩道に思いやり信号機の設置A点字ブロックの補修B違法駐輪の撤去など細部の要望も明記。まず、直せるところから改善していくことを確認しあった。


 バリアフリーなど障害者が安心して外出できるまちづくりや社会参加・自立へ向けて、活発な活動を続けている障害者と健常者の交流グループ「市原ウィズエブリワン」(倉田知典会長)がホームページを開設した。
 アドレスは、http://member.nifty.ne.jp/gentyomo/everyone/
コンピューターグラフィックスとしても活躍している倉田会長がイラストを担当、デザインは会員の渡辺建司さん(管理者)。
 「対話の輪を広げ、地域社会の人たちに障害を持っている人への正しい理解を求めていく」ことを目標に情報交換を進めていきたいとしている。
 ウィズエブリワンは、一九九一年六月に結成。仲間づくりを目的とした交流会で会員は市内外から百十人。そのうち障害者が30%。
 レクリエーションを通じた仲間づくりやイベントへの積極的な参加。また公共施設や多くの人が集まる大型店、銀行、駅前などでハンディキャップ体験などを定期的に実施。問題点などについて市と懇談したり、福祉マップを作製するなど幅広い活動を行っている。
 

千葉日報の3月16日号にエブリワンホームページの案内が掲載されました。